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「人生をどう生きるか」がテーマのブログです。自分を実験台にして、哲学や心理学とかを使って人生戦略をひたすら考えている教師が書いています。ちなみに政経と倫理を教えてます。

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経済発展を支える根幹~歴史から考えるとみえてくるもの~

 

 

古今東西、あらゆる悩みは経済問題

あらゆる政権における課題に経済発展がある。それは古来から為政者が気にかけてきたことであった。現在のような高度な技術を必要とする産業とは異なり、明治以前の日本における主要な産業は農業であった。したがって、開墾による生産面積の増加や収穫量の増加が経済発展に直結していたのである。今回は経済発展を支えるものは何なのかを考えてみたい。

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経済発展を支えるものは何か

時代をさかのぼると…

平安時代の終わりごろ、大開墾時代が訪れた。畿内(現在の近畿地方)は温暖で早くから開墾が進む一方で、関東は低湿地帯で開墾があまり進んでいなかった。それが牛馬による耕作など農業技術の発展によって開墾が進み、収穫量が増加したのである。

また江戸時代の享保期(8代将軍吉宗の治世)には、大規模な新田開発が進められた。これによって全国の田の面積は江戸時代初期に比べて2倍になった。背景には、年貢の徴収方法が収穫高によって決まる検見法から毎年一定量の年貢を徴収する定免法に変わったことで、収穫量の増加が所得の増加につながったことがあるだろう。

収穫されたもののうち、余剰分は売りに出される。鎌倉時代には定期市が日本の各地で発展し、宋から大量に銅銭が輸入され、売買の際に用いられた。また江戸時代には収穫量の飛躍的増加が全国的な流通網の整備に後押しされ、物流が盛んになった。定期市ではなく店ができ、常に売買が可能になった。そうした市場の活況の根底には、そもそも消費財の生産が盛んになること、そして生産へ向かう動機を農民が保持していたことがある。収入を増やすというモチベーションが巡り巡って経済発展へとつながった。

ここで経済発展の原動力となったのは、収入の増加が大きい。しかし、根本的な支柱として私有財産権の保障があると思う。

たとえば、前者の大開墾時代では墾田永年私財法によって新たに開墾した土地の永久私有が認められている。新たに土地を耕せば耕すほど、自分の土地が増えるのである。そして、それは収穫量、すなわち収入の増加を意味していた。また、後者の大規模な新田開発に際しても、新たに開墾した者はその土地の私有を認められていた。自分のものであるというお墨付きを得られるからこそ、苦労してでも開墾に励むわけだ。

 

 経済発展の背後にあったもの

そうした私有財産権を保障するのが国家をはじめとした統一的な権力である。平安時代においては朝廷が、江戸時代においては江戸幕府が所有権を保障していた。ただし、平安時代においては朝廷の影響力が地方にまで完全に行き届かず、そのため土地の所有者が野党などから土地を守る必要性が生じた。これが武士の起こりともいわれる。

現代においても、経済発展の根幹には私有財産権の保障がある。自らの稼ぎが奪われないという安心感があるからこそ、さらなる経済活動に邁進できるのだ。したがって、経済発展を支える根本的な柱は、所有権を保障する統一的な権力の存在だといえよう。

こうした命題を踏まえれば、私有財産制を否定する社会主義「体制」がどうして行き詰まったのか、なぜ中国は社会主義から社会主義市場経済へと資本主義を一部導入するに至ったのかを理解することができよう。

ソ連や中国といった社会主義国家は私有財産を否定し、国有財産を規定している。ここでは、どれだけ努力しようが、どれだけサボろうが、結局収入は変わらない。また、あらゆる資産が国家の所有物となれば、すべての人民が公務員となる。毎日決まった時間だけ勤務すればよいのである。どれだけ働いても給与は変わらず、しかも勤務時間にサボってもよいのであれば、生産は停滞する。社会主義国家の下では結局経済発展が行き詰まってしまったのである。だからこそ、最終的には市場原理を導入せざるを得なかったのである。

 

経済発展を支えるものは何か

冒頭の問いに戻ろう。経済発展を支えるもの、すなわち経済発展の根幹には、所有権の保障を保障する政府という要素があるのだ。

 

▼ 市場は万能ではないという話です。他2記事。

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