新卒教員の教科書

教師としての『教科書』がない。だったら自分で作ればいいんだ!そういう思いから始めました。

書評『ジパング』

 

「60年後の日本からやってきた」。

 

こんなことを言われて、あなたはどう思うだろうか。ましてや、その人間の言う未来があなたにとって悲惨なものだったとしたら。

 

今回紹介する『ジパング』はかわぐちかいじ作の漫画である。

 

 

2000年代初頭、南米に向けて出航していた自衛隊イージス艦「みらい」がタイムスリップしてしまう。そこは1942年6月、太平戦争真っただ中のミッドウェーだった。

「みらい」は沈みゆく偵察機に遭遇する。沈没していく機に向かって、「みらい」の副長の角松が飛び込んでいく。そうして、角松が助けた海軍少佐草加が物語を大きく動かしていく。

 

広島や長崎の惨状をはじめ、戦後の日本がたどった歴史を草加は知ることになる。彼が受けた衝撃はすさまじいものだっただろう。しかし、彼はただ歴史の推移を静かに眺めることができなかった。日本が負けないため、考えあぐね、たどり着いた結論がアメリカとの「早期講和」だった。

そのために、彼はあらゆる手段を用いて、本来とは異なる歴史を歩んでいく。石原莞爾毛沢東と会談したり、溥儀が暗殺されたり、ガダルカナルからの戦線が縮小されたり、、、。戦後の日本人が知る歴史とは異なり、全て草加の思い描いた通りに歴史が進んでいく。

 

そして、草加は日本が「早期講和」にたどり着く唯一の武器を完成させる。それこそが原子爆弾だった。原爆を使用することで戦争に終止符を打とうとする草加草加の考えに理解を示しながらも戦後日本に育ったゆえに人命尊重を第一に掲げる角松。角松は草加の企てを阻止しようと試みる…。物語は二つの立場が交錯しながら終盤を迎えていく。

 

様々な登場人物の思いがぶつかりあう姿にアッと引き込まれてしまった。ヒューマンドラマを楽しめるだけでなく、戦前の政治関係や第二次世界大戦の歴史を知る上で非常に参考になった。歴史の”If”を多くの人に楽しんでもらいたい。