Shiras Civics

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「人生をどう生きるか」がテーマのブログです。自分を実験台にして、哲学や心理学とかを使って人生戦略をひたすら考えている教師が書いています。ちなみに政経と倫理を教えてます。

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現実を見据えるために~書評『アドラーの教え』

「このクラスはやりづらいな…」「このクラスは話を聞かないな…」

授業中に反応が薄かったり、生徒が寝てしまうと、ふとこんな考えを抱いてしまうことがある。思考とは恐ろしいもので、ふと何となく考えたことでも脳内で反復されてしまうと、それが行動に反映される。つまり、単なる感想にすぎなかったものが、「反応があるかな…」「話を聞いてくれるかな…」といった不安となり、それが体を緊張させる。不安から、本当に授業がやりづらくなってしまうのだ。こうなってくると、軌道修正が困難になってくる。

あ~授業に行くのが億劫だな~

こんなふうに行き詰まっている時に出会ったのが本書だった。

読んでみて衝撃が走った。

「考え方を変えただけで、こんなにも勇気が湧いてくるのか」

特に私が参考になった箇所は次の3つである

①誇張

②課題の分離

③共同の課題の探求

①誇張

授業をしている中で「このクラスは寝る生徒が多い」だとか「このクラスは話を聞かない」というふうに思ったことがあった。しかし、それは誇張に過ぎない。

実際に授業中の生徒の様子を観察してみると、寝ている生徒は一部の生徒で、起きて勉強している生徒が大部分であることに気づいた。あまりにも寝ている生徒に焦点を当てすぎて、現実が見えていなかったのだ。

私たちが悩みを持つと、「基本的な誤り」が悪さをして、正常な判断力を失わせます。本当は自分に好意を持っている人もいるのに、すっかり見落としてしまうのです。実際は、世の中には苦手な人ばかりなどということは決してありません。苦手な人もいるというだけです。(岩井俊憲『アドラーの教え』P28))

本書を読んで、心のウソに気づくことができた。しかし、本書の効用はこれだけではなかった。

②課題の分離 ③共同の課題の探求

生徒が寝てしまったり、不機嫌そうな表情をしていると、基本的に何か自分に非があるように感じてしまう。

「授業がつまらないかな」「なにか悪いことをしたかな」

まずこうした言葉が頭をよぎっていた。だけれども、本書は次のように述べる。

人間関係に苦しむ人は、相手の言葉や行為、気分、感情、悩み、問題、性格などの影響を受けすぎてしまっています。(同P96)

真の人間関係を築くためには、まずしっかりと自分を肯定して、自分の課題と相手の課題を分離することが大切です。「相手の気分、感情、行動は私の責任ではない」「相手には相手の都合があるんだ」。切り分けて、発想するだけで、気分が楽になるはずです。そして、建設的な関係を作るために、共同の課題を見つけてみましょう。

(中略)

相手の課題と自分の課題を切り離した上で、共同の課題を探していけばよいのです。(同P96-97)

たとえば生徒が眠っていたり、眠そうにしているのは、昼食が終わってすぐの授業だから、消化活動のために眠いのかもしれない。

あるいは1限目であれば、部活動の朝練があったからかも眠いのしれない。あるいは教材が面白くなかったからかもしれない。

後者であれば私自身に改善の余地があるが、前者であれば私自身の問題ではなく、相手の問題である。このように自他の課題を分離した上で、どうすれば授業時間を楽しく、学びのあるものにできるか、が教師として考えるべきことである。

悩みすぎると現実が見えなくなる。具体的に「誰が」どのような状態にあるのか、「なぜそうなのか」相手側の立場に立ち、どうすればお互いのためになるのか、しっかりと考え、現実を直視していくことが地に足の着いた態度を養っていくのだろう。心構えを作るというところで、本書には大いに助けてもらった気がする。

結局悩みというのは、考え方やモノの見方に行き着くことが多い。血肉にするまで何度でも読み返そう。