3か月間教員として働いた。夏休みに突入し、今までの働き方を振り返ると、あることに気づいた。院生時代もそうだったが、教材研究のために膨大な量の本や論文を読んだことだ。深夜まで教材研究をした日には、翌朝とてもつらかったことを覚えている。けれども、たくさんの本と出会ったことは糧になっていると実感している。
書を捨て旅に出よう
さて、今年の夏は関西と東北へ旅に出ようと思う。というのは、机上だけでなく、現場で学ぶことも大事だからだ。
紙上の情報だけでなく、実物を見て、聞いて、雰囲気を味わうことで知識が活きたものとなる。単なる知識を実のあるものにしてくれるのだ。だから旅に出ることが教員として非常に重要なのである。その重要性は、院生の時に読んだ一冊の本に教えてもらった。有田和正氏の本である。
学びの詰まった一冊
有田和正氏は、プロ教師としての教材開発強化法について、次のように述べている。少々長くなるが引用したい。
わたしの提案したいことが、三つある。
一つは、常識を疑ってみることだ。わたしなど、つまらぬ常識という名の非常識にこり固まっていて、本当の姿が見えなくなっている。
教師の常識・社会の非常識といわれるではないか。常識を疑ってみることにしよう。そうすれば、新しい教材の側面が見えてくる。(184-185ページ)
二つは、アンテナを高く、広くはりめぐらせ、ということである。
雑誌一冊読まないようでは、新しい情報は入らない。アンテナをはりめぐらせて、いろいろなものに好奇心をはたらかせることだ。
(中略)
教える内容を確かにもっていてはじめて教え方の工夫ができるのである。
とにかく、いろいろな情報を「面白い」と思って集めることだ。(185ページ)
三つは、旅をすることである。わたしはあちこち講演に行くたびに、何か一つは見つけて帰る。いや、旅で見たことがもとになって、他のものが見えるのである。なるべく新しいところ、知らないところがいい。カルチャーショックを受けるようなところがいい。(186ページ)
このように氏は教材研究の一環として旅を勧める。ただし、単なるレジャーとしての旅を勧めているのではない。氏が理想とするのは知識を十分に蓄えた上での旅だ。
わたしは、これまでに23カ国を訪ねた。
それぞれの国に行く前に、多くの本を読んだ。もう行く必要がない、行ってもこれだけ見ることはできないだろう、というくらい読んだ。
しかし、行くたびに、私の予想はくつがえされた。本や写真、地図では読み取ることのできない世界が、現地では見えるのである。(47-48ページ)
現地主義を貫いているうちに気づいたのは、「百聞は一見に如かず」ではなくて、「百聞があって、一見が生きる」ということである。
予備知識があるのとないのでは、現場での一見のしかたが違ってくる。事前に勉強して、現地へ行くのが一番効果的である。(49ページ)
よみがえってきたのはかつてのワクワクだった
今夏の旅行に際して、旅行先に関する事前に入念な調査はかなわなかった。計画性のなさと時間管理の未熟さを恥じたい。
しかし、この本を改めて読んで、以前丹念に調べてから旅行した際は、とても生き生きした経験ができたことを思い出した。今夏、まだ訪ねたことのない場所への旅を通じて学びを得ようと思う。
拙い知識ではあるが、しっかりと観察したい。そして、その中から学びを発見していきたい。こういうことを書いていると、教師というのは私生活だろうが常に教師なのだなあと感じる。常に学びを忘れない教師でありたい。
参考
有田和正(2005)『若い教師に送るこの一冊① 有田和正の授業力アップ入門-授業がうまくなる十二章-』明治図書
有田和正の授業力アップ入門―授業がうまくなる十二章 (若い教師に贈るこの一冊)
- 作者: 有田和正
- 出版社/メーカー: 明治図書出版
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