ひたすら積読を消化しています。
今日紹介する本は、神野直彦先生の書いた『財政のしくみがわかる本』です。
おすすめポイント
こちらの本、平易な言葉で書かれていますが、内容はとても深いです。
財政が必要になるのはそもそもどういう背景からなのか、意義や理念、そして実態がスラスラ頭に入ってきます。
通常、財政は中学校社会科の公民や高校の現代社会、政治・経済などで扱われます。
重要なトピックであるにもかかわらず扱える時間数は限られています。
制度を教えたいけれども、消費税や国債費など時事的なテーマなどで議論もできる。それから社会保障政策も考えさせたい…!
でも結局制度の説明に終始しがちですし、時間も少ないため、要点の説明で終えてしまうこともしばしば。
ですが、この本では一つ一つの財政制度の「意味」が説明してあるため、単純な丸暗記を回避し、かつ様々なトピックを網羅しているので幅広く考えることが可能です。
たとえば、直間比率をどうするかが金持ちの負担を大きくするか、貧しい人の負担を大きくするか、という社会観に関わっているということであったり、財政赤字と財政破綻は全く性質が異なることであったり、単なるワードに過ぎなかったものが意味を持ち始めます。
おすすめの方
そういう点で中高生にとてもおすすめしたい一冊です。
特に「一度財政を勉強した」けども、つながりがよくわからない生徒さんには非常に重宝するんではないかと思います。
財政分野は受験でも頻出です。特に私大の上位や国公立の二次試験を受けるのなら論述問題も出ますから深い理解が必要です。受験期ではなく、高2までに読んでおくといいのかなと思います。
また社会科・公民科の先生にもおすすめです。
こちらの本には授業で使える問いであったり、説明の際に使える例が豊富にあります。
たとえば、借金は悪いことなのか?という発問。
僕たちは借金は悪いことだと考えています。しかし、それは僕らが家計として経済活動をしているから。家計は消費こそすれども生産をしません。ですから、収入の中でやりくりしないといけませんから、それを越えて消費するのはダメなんですね。一方で企業は借金しても大丈夫。なぜなら生産して収入を大きくすれば、そこから返済できるから。では、政府の借金はどうなのか…
本書を読めば、経済の3主体と財政がきっちりと関連をもって理解できるはずです。
また、本書の随所に出てくる財政を考えることは理想の社会を考えることという箇所は、授業でも使える題材だと思います。
経済学に興味がある方・財政に興味がある方・国の仕事に興味のある方にもおすすめです。
人によっては?かも
出版が2008年と10年以上前ですが、原理原則を知るには最適かと思います。
あとこの本は筆者の主張・思想が出ています。時々政府を批判したりするので、ある程度財政を勉強した方が読むにはちょうどいいかと思います。
ただ私個人は神野直彦さんの主張には賛同しますし、原理原則から批判しているのでまっとうな本だと思います。
まとめ
財政とは国民の共同の財布です。
僕らは税金を納め、それを政府は公共サービスなどを通して国民に配っています。
ですから、財政を考えることは社会の在り方を考えることなのです。
それに関してこの本が示唆するところはとても多いので、また別の記事で紹介したいと思います。
それにしても岩波ジュニア新書は中高生向けとはいえ、大人が読んでも物凄く勉強になります。
ああ、積読を減らさねば…(あと100冊くらい)