1月29日に、令和3年度大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の問題作成方針(https://www.dnc.ac.jp/news/20200129-01.html)が出されました。
社会科系の科目に焦点を絞って作問の方針をまとめてみました。
共通テストの問題作成方針要点
全体のポイント
以下、(ポイントの)抜粋です。
第1 問題作成の基本的な考え方 より
⾼等学校教育の成果として⾝に付けた,⼤学教育の基礎⼒となる知識・技能や思考⼒,判断⼒,表現⼒を問う問題作成
平成 21 年告⽰⾼等学校学習指導要領(以下「⾼等学校学習指導要領」という。)において育成することを⽬指す資質・能⼒を踏まえ,知識の理解の質を問う問題や,思考⼒,判断⼒,表現⼒を発揮して解くことが求められる問題を重視する。
また,問題作成のねらいとして問いたい⼒が,⾼等学校教育の指導のねらいとする⼒や⼤学教育の⼊⼝段階で共通に求められる⼒を踏まえたものとなるよう,出題教科・科⽬において問いたい思考⼒,判断⼒,表現⼒を明確にした上で問題を作成する。
「どのように学ぶか」を踏まえた問題の場⾯設定
⾼等学校における「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善のメッセージ性も考慮し,授業において⽣徒が学習する場⾯や,社会⽣活や⽇常⽣活の中から課題を発⾒し解決⽅法を構想する場⾯,資料やデータ等を基に考察する場⾯など,学習の過程を意識した問題の場⾯設定を重視する。
第2 出題教科・科目の出題方法,問題作成のねらい,範囲・内容等 より
○ 問題作成のねらい,範囲・内容
「第1」に⽰す問題作成の基本的な考え⽅を踏まえつつ,⾼等学校学習指導要領に準拠するとともに,⾼等学校学習指導要領解説及び⾼等学校で使⽤されている教科書を基礎とし,特定の事項や分野に偏りが⽣じないように留意する。
なお,⾼等学校における通常の授業を通じて⾝に付けた知識の理解や思考⼒等を新たな場⾯でも発揮できるかを問うため,教科書等で扱われていない資料等も扱う場合がある。
これらから見えてくることは、単なる知識の暗記ではなく、知識の理解、知識を活用した思考力が求められているということです。
思考力などを養う学習形態として、新学習指導要領で示されている「主体的・対話的で深い学び」が授業の場面に想定されています。大学入試に対応する上で授業改善は急務なようです。
出題教科・科⽬の問題作成の⽅針
公民科・地理歴史科それぞれにおいて思考する過程が重視されています。ただ、科目によって考察の過程に特色があります。
(1)公民科のポイント
(現代社会)
現代社会の課題や⼈間としての在り⽅⽣き⽅等について多⾯的・多⾓的に考察する過程を重視する。⽂章や資料を的確に読み解きながら基礎的・基本的な概念や理論,考え⽅等を活⽤して考察する⼒を求める。問題の作成に当たっては,図や表など,多様な資料を⽤いて,データに基づいて考察し判断する問題などを含めて検討する。
(倫理)
⼈間としての在り⽅⽣き⽅に関わる倫理的諸課題について多⾯的・多⾓的に考察する過程を重視する。⽂章や資料を読み解きながら,先哲の基本的な考え⽅等を⼿掛かりとして考察する⼒を求める。問題の作成に当たっては,倫理的諸課題について,倫理的な⾒⽅や考え⽅を働かせて,思考したり,批判的に吟味したりする問題や,原典資料等,多様な資料を⼿掛かりとして様々な⽴場から考察する問題などを含めて検討する。
(政治・経済)
現代における政治,経済,国際関係等について多⾯的・多⾓的に考察する過程を重視する。現代における政治,経済,国際関係等の客観的な理解を基礎として,⽂章や資料を的確に読み解きながら,政治や経済の基本的な概念や理論等を活⽤して考察する⼒を求める。問題の作成に当たっては,各種統計など,多様な資料を⽤いて,様々な⽴場から考察する問題などを含めて検討する。
(倫理,政治・経済)
「倫理」「政治・経済」を総合した出題範囲から,上述の両科⽬の問題作成の⽅針を踏まえて問題作成を⾏う。
(2)地理歴史科のポイント
(地理(地理 A,地理 B))
地理に関わる事象を多⾯的・多⾓的に考察する過程を重視する。地理的な⾒⽅や考え⽅を働かせて,地理に関わる事象の意味や意義,特⾊や相互の関連を多⾯的・多⾓的に考察したり,地理的な諸課題の解決に向けて構想したりする⼒を求める。問題の作成に当たっては,思考の過程に重きを置きながら,地域を様々なスケールから捉える問題や,地理的な諸事象に対して知識を基に推論したり,資料を基に検証したりする問題,系統地理と地誌の両分野を関連付けた問題などを含めて検討する。
(歴史(世界史 A,世界史 B,日本史 A,日本史 B))
歴史に関わる事象を多⾯的・多⾓的に考察する過程を重視する。⽤語などを含めた個別の事実等に関する知識のみならず,歴史的事象の意味や意義,特⾊や相互の関連等について,総合的に考察する⼒を求める。問題の作成に当たっては,事象に関する深い理解に基づいて,例えば,教科書等で扱われていない初⾒の資料であっても,そこから得られる情報と授業で学んだ知識を関連付ける問題,仮説を⽴て,資料に基づいて根拠を⽰したり,検証したりする問題や,歴史の展開を考察したり,時代や地域を超えて特定のテーマについて考察したりする問題などを含めて検討する。
教師にできることはなんだろうか
社会科の目標は「社会的な見方・考え方」の涵養です。
共通テストで試されていることは、各科目で具体化された見方・考え方が実際のテストの際に発揮できるかどうか、その学力が受験生にあるかどうか、ということだと思います。
となれば、教師にできることは日々の授業改善です。
問題の知識量が現行の学習指導要領に則っているので、受験生が学ぶべき知識量は変化ありません。
では、従来通りの教え方でいいのかといえば、そんなことはありません。
その知識をどう活用するか、または知識をどう評価するか、といった見方・考え方に収斂するような授業が求められているのでしょう。
(こんな偉そうなことを言っていますが、私自身は非教育学部出身のため、教育学や認知科学など授業改善の方途を勉強中です。そして、それを実践に落とし込む大変さよ…)
私自身は、大学入試の変化を非常に好意的に見ています。
資質・能力を基盤とした授業改善の強制力となりうるからです。もちろん受験生は見えない入試のあり方に不安でしょう。だからこそ、教員の授業改善が急務なのだと思います。(もちろん行政の方針が二転三転するなど、制度的な不備は一刻も早く解消されるべきです)。