学習指導要領という全国の先生たちのバイブルがあります。
10年ごとに改訂され、ちょうど今頃が改訂の時期になります。
先生が行う授業だけでなく、中学入試や高校入試、はたまた大学入試なども学習指導要領の内容に基づいて作成されるので、教育業界にとっては非常に重要な書類になります。
しかも今回の学習指導要領の内容は今までと大きく変わります。
今回は文部科学省の資料を使って、これを整理したいと思います。
そもそも教育の目標は?
学校教育の最終目標は、教育基本法に書かれた2つのゴールになります。
①個人一人一人の「人格の完成」
②「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質」を備えた心身ともに健康な国民の育成
ものすごい抽象的なので、このあたりは追々考えていきましょう…
さて、この最終目標に向かって、学校教育の中で育成すべきだとされているのが「資質・能力」です。これを学習指導要領では3つに編成しているため、「資質・能力の三つの柱」と呼ばれています。
資質・能力の三つの柱って何?
【論点整理】育成すべき資質・能力 「3つの柱」 – できる!小学校・中学校で「アクティブ・ラーニング」
資質・能力の三つの柱は、①知識・技能(何を知っているか・何が出来るか)、②思考力・判断力・表現力(知っていること・出来ることをどう使うか)、③学びに向かう力・人間性等(どのように社会・世界と関わり、より良い人生を送るか)に分けることが出来ます。
具体的に見ていくと以下のようになります。文部科学省の解説ページより引用します。
知識・技能
各教科等に関する個別の知識や技能などであり、身体的技能や芸術表現のための技能等も含む。基礎的・基本的な知識・技能を着実に獲得しながら、既存の知識・技能と関連付けたり組み合わせたりしていくことにより、知識・技能の定着を図るとともに、社会の様々な場面で活用できる知識・技能として体系化しながら身に付けていくことが重要である。
要は知識です。たとえば、三権分立やサッカーボールのけり方などでしょう。
ペーパーテストで問われる最も基礎的な要素です。従来のテストではここが問われすぎた!という批判が起きたわけですね。
思考力・判断力・表現力
問題を発見し、その問題を定義し解決の方向性を決定し、解決方法を探して計画を立て、結果を予測しながら実行し、プロセスを振り返って次の問題発見・解決につなげていくこと(問題発見・解決)や、情報を他者と共有しながら、対話や議論を通じて互いの多様な考え方の共通点や相違点を理解し、相手の考えに共感したり多様な考えを統合したりして、協力しながら問題を解決していくこと(協働的問題解決)のために必要な思考力・判断力・表現力等である。
特に、問題発見・解決のプロセスの中で、以下のような思考・判断・表現を行うことができることが重要である。
- 問題発見・解決に必要な情報を収集・蓄積するとともに、既存の知識に加え、必要となる新たな知識・技能を獲得し、知識・技能を適切に組み合わせて、それらを活用しながら問題を解決していくために必要となる思考。
- 必要な情報を選択し、解決の方向性や方法を比較・選択し、結論を決定していくために必要な判断や意思決定。
- 伝える相手や状況に応じた表現。
要は知識をどう活用するか、ということです。
たとえば、日本の貧困率をどう改善するか?という問いを投げかけられたときに、現状の制度に何があるのかなどは公民科の知識がベースになりますから、そうした知識を踏まえて改善策を提言するというのが該当するでしょうか。
この考え方として、問題を発見したり、問題解決をしたり、根拠を用いて主張をしたり、といった多様な方法があるわけです。
評価方法としては、レポートやプレゼンなどの成果物、議論の様子など学習途中の評価が上げられます。
学びに向かう力・人間性等
資質・能力を、どのような方向性で働かせていくかを決定付ける重要な要素であり、以下のような情意や態度等に関わるものが含まれる。
- 主体的に学習に取り組む態度も含めた学びに向かう力や、自己の感情や行動を統制する能力、自らの思考のプロセス等を客観的に捉える力など、いわゆる「メタ認知」に関するもの。
- 多様性を尊重する態度と互いのよさを生かして協働する力、持続可能な社会づくりに向けた態度、リーダーシップやチームワーク、感性、優しさや思いやりなど、人間性等に関するもの。
- こうした資質・能力については、学習指導要領等を踏まえつつ、各学校が編成する教育課程の中で、各学校の教育目標とともに、育成する資質・能力のより具体的な姿を明らかにしていくことが重要である。その際、子供一人一人の個性に応じた資質・能力をどのように高めていくかという視点も重要になる。
個人的にはここの理解が最も難しいと思いました…そもそも主体的に学習に取り組む態度って何やねん!という感じですね。
また、優しさや思いやりとかは情緒にかんする事柄なので、めちゃくちゃハードル高いですね(心理学勉強しないと…)
様々な要素がありますが、これらの能力は全人的な能力であって、学校だけでは育成が難しい点に特徴があります。それゆえ、新学習指導要領では家庭や地域社会などとの連携が謳われているわけです(これを社会に開かれた教育課程といいます)。
これらはソーシャル・スキルとよばれるものに該当します。
そして、これら三つの資質・能力を育てる手段として考えられたのが主体的・対話的で深い学び、いわゆるアクティブ・ラーニングです。(下の図を参照)
結局何が変わるの?
今までの学習指導要領は内容から出発して作られていました。
つまり、社会科だとこんな内容教えたいよね~、数学だと…(以下無限ループ)という感じで作られていました。
だから、ペーパーテストが中心になり、知識偏重という批判が起こったわけです(各教科からスタートしているので統一性もなかったんですね)。
そこで次の学習指導要領からは、まず育てたいゴールである資質・能力から出発して、そこから逆算して、各教科で「こんな能力育てたり、知識教えたいよね~」と変わったわけです。
ただ、大事なことは知識は変わらず重要だ、ということです。
新しい学習指導要領では、知識を使って考え、問題解決能力や創造性、思いやりなどの資質・能力を身に付ける、という形で整理されました。
今後はこの形で学校の授業や入試がどんどん変化していくでしょう。
現に共通試験(センター試験は今年から共通試験に変わりました)では、新学習指導要領に一部基づいて作問すると発表されています。
それでは、今回のまとめです!
- 教育の最終ゴールは「人格の完成」と「平和で民主的な社会の形成者」
- 学校教育では最終ゴールに向けて、3つの資質・能力を育てることが目標になる
- 資質・能力を育てる手段がアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)
▼新学習指導要領で社会科はどう変化するのかについて書いています。
▼新学習指導要領の考え方については、上智大の那須先生が詳しく解説されています!
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