10月10日、ナゴルノ・カラバフをめぐる紛争について、アルメニアとアゼルバイジャンが停戦に合意しました。
今回は開戦から停戦までの経過、そして今後の見通しについてまとめていきます。
▼こちらの記事で紛争の背景・経緯について解説しています。
停戦に合意
ロシアがアルメニアとアゼルバイジャンの両国を仲介し、9時間にわたる協議の末、ようやく停戦合意に達しました。
10日の正午に停戦し、捕虜の交換と戦闘による遺体の引き渡しが行われました。
今回の停戦合意はあくまでも人道上の観点から実施されたもので、それゆえ捕虜交換と遺体引き渡しに留まります。
しかし、停戦合意むなしく11日には戦闘が再開された模様です。
ナゴルノ・カラバフ戦争の経過
9月27日 アゼルバイジャン軍がナゴルノ・カラバフに侵攻。アゼルバイジャンとアルメニア間で戦闘開始
10月3日 アゼルバイジャン第2の都市ギャンジャが砲撃
10月4日 ナゴルノ・カラバフの中心都市ステパナケルトを砲撃
10月9日 ナゴルノ・カラバフの「救世主大聖堂」が砲撃
10月10日 両国による停戦の宣言
10月11日 ナゴルノ・カラバフで爆撃(アゼルバイジャン軍によるものとされています)
現在、両国は停戦合意に反したと互いに非難(ロシアの仲介が無意味に?)
上記の経緯を見ても、民間人に被害が出るほど戦闘が拡大していることがわかります。
約2週間の戦闘で死傷者は数百から数千人に上っています。
軍人の死傷者についてはアルメニア、アゼルバイジャン両国の主張が食い違っていますが、数百人から数千人規模の死傷者です。
一方で、民間人の死傷者は次の通りです。
アルメニア人 7人死亡、30人以上負傷
アゼルバイジャン 19人死亡、55人負傷
参考:https://armenpress.am/eng/news/1029697.html
参考:https://armenpress.am/eng/news/1029526.html
今後の見通し
2016年の戦闘では死者数が約100人程度だったことを考えると今回の紛争が大規模だったことがわかります。
また、10日に停戦合意にたどり着いたとはいえ、11日には砲撃が行われており、今後も断続的に戦闘が継続していくでしょう。
1990年代に生じた紛争では3万人以上が死亡、100万人が避難したといわれています。
その際に仲介した国もロシアでしたが、今回もロシアが両国の仲介をしています。
ロシアはアルメニアと深い関係にはありますが、アゼルバイジャンと緊密な関係を持つトルコともシリア戦線などで協力関係をもっています。さらに数百万人のアゼルバイジャン人がロシアに出稼ぎで滞在しており、経済的に強い関係にあります。
また、ロシアは現在、キルギスやベラルーシなど旧ソ連圏の国々での政変問題を抱えており、そのためナゴルノ・カラバフ戦争に介入するほどの余裕がないといえます。
▼ベラルーシでは、ルカシェンコ大統領に対する反政府デモが起きています。
そもそも今回の紛争の背景には、民族的・宗教的な対立があります。
今回紛争地となったナゴルノ・カラバフはアルメニア人が実効支配していますが、国際的にアゼルバイジャンの領土とされており、アゼルバイジャンも自国領だと主張しています。
一方で、アルメニア人は紀元前よりこの地域に住んでおり、現在のアゼルバイジャン領もアルメニア人がかつて暮らしていました。
ソ連に両国が組み込まれていったん対立は解消しました(共産主義は宗教禁止ですし、「ソ連」という意識ができるので安定していました)が、ソ連崩壊後には対立が深刻化し、断続的に戦闘が起きている状況です、
経済問題ではなく、民族問題なので根本的な対立は極めて難しい状況です。
ロシアの停戦仲介もむなしく、今後も戦闘が継続していく見通しです。その際、トルコやイスラエル、ロシア、EUなどがどのように介入するのか、という点がこの地域の安定化に関する大きなポイントになってくるかと思います。
現状報告的な記事にはなりましたが、今後も追いかけていきたいと思います。
それでは。
参考
ナゴルノカラバフ、停戦後に新たな爆発 双方が非難の応酬 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News
ナゴルノカラバフ紛争でさらなる民間被害 停戦の望み絶たれる 写真13枚 国際ニュース:AFPBB News
停戦合意でも戦闘続くナゴルノ・カラバフ なぜ「ロシアとトルコがカギ」か:朝日新聞GLOBE+
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