今年度からセンター試験に変わって、共通テストが実施されます。
さらに、21日、2025年からの共通テストにおける実施科目案がわかりました。
大学入試はどのように変わるのか、主に社会科・公民科の視点からお話しします。
2025年と言えば、現在の中学校2年生が受けるテストです。
一体何がどう変わるのか、見ていきましょう!
科目は6教科30科目から7教科21科目へ
共通テスト、25年から「情報」新設…7教科21科目に再編へ : ニュース : 教育 : 教育・受験・就活 : 読売新聞オンライン
センター試験が廃止され、代わりに今年度より共通テストが実施されます。
ただし、出題範囲など学習内容はセンター試験と変わりません。
出題の方法が変わり、思考力が重視されるようになります。
学習指導要領という教師にとっての六法全書のようなものがあるのですが、それに基づいて共通テストは作成されています。
さて、現在の科目編成は6教科30科目。「国語」「数学」「外国語」「理科」「地理歴史」「公民」の6科目です。
これが2025年から7教科21科目になります。
ちなみに教科と科目の違いですが、ざっくり言えば教科は科目よりも大きな枠組みで、科目はさらに細分化した枠組みです。たとえば、公民という教科が、倫理、政治・経済、公共という科目に細かく分かれるという感じです。
2025年からは、前述の6教科に加えて「情報」が新設されます。
NHKではこのように報道されていました。
「情報」の試験には、パソコンやタブレットを活用することが適当としつつ、現状では、▽端末など全国的に均質な受験環境の確保が難しいこと、▽機械的なトラブルを完全に排除できないことなど公平性の観点から見送られ、マークシート式で出題するとしています。
このほか、▽「地理歴史」「公民」の2教科は、現在の「日本史A」「日本史B」などの10科目から、「歴史総合、日本史探究」や「公共、倫理」などの6科目に変更される一方、▽外国語の英語については、スピーキングやライティングの試験形態は導入せず、引き続き、リーディングとリスニングでの試験が提案されています。
何が変わるのか?
今回ニュースとなっているのは科目編成ですので、出題方法や内容についてはまだ詳細がわかりません。
編成の変化について、科目別に見ていくと下記の通りです。
- 国語:現状通り「国語」のみ。
- 数学:「簿記・会計」、「情報関係基礎」が廃止、現行の「数学Ⅱ・数学B」が「数学Ⅱ・数学B・数学C」に。
- 理科:「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」の4科目が1科目に統合。
- 外国語:現状通り、「英語」「ドイツ語」「フランス語」「中国語」「韓国語」のまま。
- 地理・歴史、公民:大幅に改変。後ほど詳述。
- 情報:新設
共通テストの位置づけは国公立大学の一次試験です。
科目が改変されることで受験生が選択する科目も変更せざるを得なくなるため、受験生の戦略・教員の進路指導に大きな影響を及ぼしそうです。
特に新設の「情報」を国立大学がどのように扱うのか、共通テストの入試科目として採用するのかどうかが結構重要と思われます。
仮に採用されれば、現状情報科教員は各校に2~3人程度しかいませんし、予備校の講座は当然ありませんから、そうした中でどのように受験対策をすれば良いか、混乱が予想されます。
難関国立志望者は倫理、政経に代えて何を選ぶのか?
ここからは公民科教員としての視点で解説します。
改めて改変案を見ると、公民科は大きく変わりそうです。
従来、公民科は「現代社会」「倫理」「政治・経済」「倫理、政治・経済」の4科目から選択することになっています。
そして、東大や京大、一橋大学などの難関国立大学を志望する場合、「倫理、政治・経済」を選択しなければ受験できません(東工大は「現代社会」での受験を認めています)。
この理由は単位数と関係しています。多くの大学が認めている「世界史B」や「地理B」等の科目は4単位です。一方で「政治・経済」も「倫理」も2単位。ですから、受験科目として認めるために合わせて4単位の「倫理、政治・経済」を多くの大学が受験科目として採用しているのです。
ちなみに「倫理、政治・経済」以外は全て2単位です。
▼こちらの記事では、共通テスト公民科の特徴を解説しています。
さて、2025年の改変案では、公民は「公共、倫理」「公共、政治・経済」「公共、地理総合、歴史総合」になります。
それぞれの単位数は「公共、倫理」が4単位、「公共、政治・経済」が4単位、「公共、地理総合、歴史総合」が6単位です。
このように単位数が4単位以上になっているので、ほとんどの大学で3つとも選択できるかもしれません。
また、改変案では一方の受験生にとっては負担増加、他方の受験生にとっては負担は変化なしといえそうです(国公立志望者の場合です)。
負担が増える受験生は、従来2単位である「現代社会」で受験が可能だった層です。
この改変によって、少なくとも4単位以上になるので、負担は単純計算で倍になります。
現状では、「現代社会」で東工大や筑波大、東京海洋大、東京学芸大などが受験可能です。
一方で、負担が変わらないのは4単位である「倫理、政治・経済」が受験科目だった大学を志望する層です。
ちなみに内容面についてはこんな風に予想しています。
共通テストの科目編成が変わるとして、公共の位置づけが微妙だなぁ。
— しらす (@dokomademoinaka) 2020年10月22日
「地理総合、歴史総合、公共」の6単位で1セットとすると、公共は倫理や政経の概論的・網羅的な科目として位置づけられている。
ただし、そうなれば「公共、倫理」、「公共、政治・経済」で内容面の重複が生じる。
そうなれば現行の「倫理、政治・経済」よりも簡単になってしまうので、おそらく公共はかなり思考力に特化して問題を作り、「政治・経済」「倫理」は若干網羅的に作問して棲み分けを図るんではないかなぁ。
— しらす (@dokomademoinaka) 2020年10月22日
ないしは逆パターンで、「公共」が網羅的に作成されて、「倫理」「政治・経済」が思考力特化になるパターン。
— しらす (@dokomademoinaka) 2020年10月22日
まぁ、共通テストはどのテストも思考力を重視して作問されるんで、程度問題に収斂する気がしますが。
出題内容や出題方法について、現在議論中だそうです。
文部科学省が来年2021年の夏にも方針を示すそうなので、今後も追いかけていきたいと思います。
それでは!
▼大学入学共通テストがどんな内容で、どんな出題方法で作られているか、こちらの記事で解説しています。
参考
- 大学入学共通テストに「情報」新設へ 2025年から :日本経済新聞
- 大学入学共通テストの再編案 「情報」新設へ 2025年から | 教育 | NHKニュース
- 共通テスト、25年から「情報」新設…7教科21科目に再編へ : ニュース : 教育 : 教育・受験・就活 : 読売新聞オンライン
- 大学共通テストに教科「情報」導入案 2024年度から:朝日新聞デジタル
- 共通テストに教科「情報」新設 25年から、入試センター素案
- 大学入学共通テスト、2025年から「情報」新設案|ニフティニュース
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