今回は日常生活に役立つ哲学のお話をします。
取り上げるのはイギリスの哲学者、ベーコンの考え方。
それではどうぞ!
人は間違って世界を捉えてしまう
『ファクトフルネス』がベストセラーになりました。
同書はデータ(事実)から世界の姿を正確に捉えようという趣旨の本です。
人の認識はいつでも正確とは限りません。
人の認識は、経験や知識などの情報を基にして作られていきます。
世界に関する認識も当然、学校で学んだ知識や旅行などで見たものなどから作られていますが、僕らはしばしば間違ったまま世界を認識してしまいます。
たとえば、貧困状態の人は世界に何人いるのかといったデータに関する誤解、老後に「とにかく2000万円が必要なんだ!」という思い込みなどです。
とかく、こうした誤解や思い込み、偏見などによってものの見方・考え方は簡単に歪められてしまいます。
ベーコンの「4つのイドラ」
今から約400年前、イギリスにフランシス・ベーコンという哲学者がいました。
その頃、ヨーロッパではキリスト教の影響力が弱まっていました。
ベーコンは「神」や「宗教」によって世界を説明するのではなく、「実験」や「観察」によって世界の姿を正しく捉えようとしました。
ですから、偏見を排除して「正しく」観察をしないといけません。
そうした考えの下でベーコンは、人間には4つの偏見があり、それに気をつけなければならないと述べました。
その偏見のことをイドラと言います。
種族のイドラ
これは人間が本来的に持っている偏見や錯覚のことです。
たとえば、人間の視覚は三色の原色で世界を認識しますが、カラスは三色に加えて紫外線なども認識します。
人間の習性を科学的に知れば、回避できることもある訳ですね。
洞窟のイドラ
個人の経験から生じる誤解や偏見のことです。
井の中の蛙という言葉がまさにこの偏見です。狭いコミュニティの中でのみ信じられていることを信じてしまう。たとえば、ある職場で長年やってきて「この方法が正解だ」と思い込んでも、転職してみたら、より合理的な方法が行われていたことを知る、とかでしょうか。
当たり前と思い込んでいることも、色んな視点から疑ってみると、当たり前ではないかもしれないですね。
このニュースは、儒教の影響力の強い日本文化特有の問題を指摘されています。
市場のイドラ
市場とは、人が集まる場所のことを言います。人が集まれば、おしゃべりや噂などが飛び交いますが、はたして信憑性はあるのか、ということですね。
噂や人づてに聞いた情報のみを信じてしまうと、間違った判断を下してしまうかもしれません。
たとえば、世紀末に世界が破滅するという「ノストラダムスの大予言」。結局、世界は破滅しませんでしたが、それに備えたという人も大勢いたみたいです。
最近だとSNS上のフェイクニュースでしょうか。熊本地震の際に動物園からライオンが逃げた、というデマで多くの人が恐怖を感じたでしょう。
地震直後「ライオン放たれた」 投稿の男性、不起訴処分:朝日新聞デジタル
劇場のイドラ
これは上位の権威を持つ人、両親や政治家などの言うことを信じてしまうことで起こる偏見のことです。
たとえば、政治家がマヤの予言を信じていて「2012年に世界は滅びます!」と言ったとしましょう。その政治家の熱烈な支持者は信じてしまうかもしれません。
誰が言ったとしても、常に誤っているかもしれません。
それは今この記事を書いている僕自身もそうです。ですから、自分だけでなく、誰の発言であろうが、鵜呑みにせず疑って調べたり、考えたりすることが重要だというわけです。
イドラから抜け出すには?
思い込みや偏見にとらわれているとき、中々気づくことは出来ません。
ですから客観的に自分の思考を把握するために、自分の考えを一度立ち止まって「本当にそうかな?」と疑ってみることをオススメします。
たとえば、自分の主張と根拠を書いてみて、それを4つのイドラに照らし合わせます。また、必要であればデータなどを調べて事実に基づいているかどうかも照合するといいでしょう。
こうしたことを積み重ねて、疑うことを習慣化することが重要です。
その意味では、事実で正確に世界を捉えようと主張した『ファクトフルネス』は現代におけるイドラを克服しようという試みに思えました。
ビジネスや学問、日常生活、人間関係でも事実を正確に捉えることは非常に重要です。
些細なけんかは誤解から始まることもありますし、仕事のミスも誤解や偏見に基づくこともあります。
ベーコンの考え方が皆さんの生活に役立てば幸いです!
それでは!
▼いずれかクリックいただけますと幸いです!よろしくお願いします!