日本の四半期(7~9月期)GDPが発表されました。
結果は、前期(4~6月期)より21.4%の回復でした。
52年ぶりの高成長らしいですが、まだまだ油断は出来ません。
詳しく見ていきましょう。
内閣府が16日発表した2020年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で4~6月期から5.0%、年率換算で21.4%増えた。
この記事を読めば、リンク先のニュースを理解できるようになります!
GDPとは?
GDPというのは、国内総生産(Gross Domestic Product)のこと。
簡単に言えば、一国の経済全体をある期間で区切って、どれくらい新しいモノやサービスが生産されているのかを表わす指標です。
通常は、一年間に生産された付加価値の合計と表現されます。
その国の経済規模を示していて、国際比較を可能にするためにドルや円などの通貨で表わされます。
経済学では、主に3つのキャラクターしか出てきません。家計、企業、政府です。
GDPはこの3つの経済主体の経済活動と、海外との貿易で構成されています。
家計がお買い物などで消費した額、企業がモノやサービスを生産したり、設備投資につぎ込んだ額、政府が公共事業などで使った額、そして輸出から輸入を引いた分(これを純輸出といいます)から成り立っています。
国によって、家計の消費額が大きいのか、企業の設備投資額が大きいのか、政府の財政支出が大きいのか、それとも貿易額が大きいのかは異なります。
回復率は52年ぶり。けど実額ベースではまだまだ回復途上
7~9月期GDP、最大の21.4%増 1年ぶりプラス成長―コロナ前水準回復せず:時事ドットコム
まず今回のGDP速報値では4~6月期と比べて21.4%の回復でした。バブル期を超える数値ですから、驚異的な回復率ですね。
ただし、これはGDP成長率で、割合に過ぎません。
大事なことは実額ベース、つまり実際の総額がどう動いているのかを確認しないと実情がわかりません。
先月は給料が半分減ったけど、今月は20%回復した!といっても喜べないですもんね。
では、実額ベースで見てみましょう。
ビジネス特集 経済データで見る新型コロナの半年 | 新型コロナ 経済影響 | NHKニュース
ご覧の通り、実額ベースでは2014年頃と同水準です。
3月のコロナショックで483兆円まで落ち込みましたが、まだ507兆円です。
コロナショックでの落ち込みが2009年のリーマンショックの落ち込みよりも激しいものであることを鑑みると、今回の不況が如何に深刻かおわかりかと思います。
回復の要因としては、次のことが言われています。
ただし、GDPはあくまでも全体的な概要を示すものにすぎません。
項目ごとに分析することによって、詳細な経済の実情が見えてきます。
続いて項目ごとに見ていきましょう。
項目別に見てみると今の日本の状況がわかる
先ほど見たようにGDPは①家計の消費、②企業の設備投資、③政府の消費・投資、④貿易によって構成されています。
今回の回復要因は家計による旅行関連支出の増加と企業のアメリカ向け自動車の輸出増加といわれていますが、逆に言えば、それ以外の部門はよろしくないということです。
NHKの記事を参考に各部門の状況を見ていきましょう。
ビジネス特集 経済データで見る新型コロナの半年 | 新型コロナ 経済影響 | NHKニュース
家計消費の状況です。
自粛の影響がはっきりと出ていますね。
緊急事態宣言がでた4月はマイナス11.1%、5月は16.2%と2ケタの落ち込みとなった。現金10万円の一律給付などの下支え策もあってその後、マイナスは縮小したが、最新データの9月の消費はマイナス10.2%となった。
品目別に支出をみると、家で過ごす時間が増え、パスタなどの食料品、チューハイなど家飲みのアルコールが伸びている。
一方でリモートワークの影響でスーツは大きなマイナス。マスクをするため口紅など化粧品もマイナス。落ち込みが特に顕著なのが、外食、鉄道運賃、パック旅行などだ。
巣ごもり消費が増えている一方で、外食や鉄道関連が軒並み減少。
またリモートワークなどでスーツ需要が激減しているそうです。
▼企業の業績も悪化です。
こうした消費の減少は労働者にも大きな影響を与えています。
コロナショック以前は1.6倍あった有効求人倍率が1.03倍に下落しています。
特に「生活関連サービス・娯楽」、「宿泊・飲食」、「卸売、小売」で大きく下落しているそうです。
失業者が増加傾向にあります。
また、それだけでなく給与総額も減少しています。
4月以降、減少を続けており、理由としては業績悪化に伴う賞与や残業代の減少などがあげられます。
▼ANAやJAL、JR東日本、幸楽苑など多くの企業が賞与の削減をし始めています。
それでは企業の設備投資はどうでしょうか。
設備投資は3.4%減で、減少に歯止めがかからなかった。主に生産用機械への投資が減った。業績不安や先行き不透明感から企業の投資意欲は戻っていない。住宅投資も7.9%減と、大幅な落ち込みとなった。
個人消費の減少は「モノが売れない」ということを意味しますから、企業も設備投資に慎重になっています。
一方で政府支出は増加しています。同じく日経新聞からです。
政府消費(政府支出)も2.2%増えた。4~6月期に広がった受診控えからの反動で医療費が増えた。政府の観光需要喚起策「Go To トラベル」の政府負担分も積み上がった。公共投資は0.4%増え、2四半期連続のプラスだった。
ただこちらは財政出動によるモノです。
暴論を言えば、GDPをただただ増やしたければ、政府支出、つまり財政規模を拡大すればよいのです。
ただ、問題はどこにお金を流せば国民の生活が豊かになるか?ということだと思うので、今回のGo to トラベルやGo to イートでは消費者にも生産者にも一定の還元効果はあったのではないでしょうか。
(Go to イート早くも終わってしまいますね…)
▼こちらはGo To トラベルの解説記事です。
最後に輸出の状況です。
輸出は7・0%増(同17・4%減)で、3四半期ぶりのプラスだった。経済活動の再開が早かった中国に加え、停滞していた欧米向けも持ち直した。自動車や自動車部品、電子部品などが伸びている。
下の地図を見ていただくとわかるように、欧米では今でも感染者数が深刻な状況です。今後の先行きは楽観視できないかと思います。
まとめ
確かにGDPは回復傾向にありますが、実額ベースで見ると以前の水準にはまだまだ届いていません。
また、失業率が上昇し、給与も減少していますから、人々の生活は確実に厳しい状況に向かっています。
特にコロナショックで打撃を受けた旅行関連業、旅客業、外食産業、小売業など企業・労働者共に厳しい状況にあります。
政府支出が増加傾向にありますが、旅行や外食などの「非日常」に近い消費を喚起するというフェーズではなく、住宅補助など日常生活に必須の消費を支援する政策を拡充した方が今後の不況に対応できるのではないかなと思っています。
ただし、そうした政策をするとは限らないので、今個人ができることはスキルを高めてキャリア・アップできるように備えたり、貯蓄や投資などで資産形成をして自己防衛するというのがいいように思えます。世知辛いですが、自助的な世の中になっています。
日経平均株価は不況とは裏腹にがんがん上がっていますが、目の前の経済状況は非常に厳しいです。
以上、GDPから見える日本経済の現状でした。
それでは!
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参考
- 7~9月期GDP、最大の21.4%増 1年ぶりプラス成長―コロナ前水準回復せず:時事ドットコム
- 日本の経済成長率52年ぶり高水準、消費や外需持ち直す-7~9月 - Bloomberg
- 株価 大きく値上がり 実質GDP大幅伸びで市場に安心感 | 株価・為替 | NHKニュース
- GDP7~9月年率21.4%増 4期ぶりプラスでも回復途上 :日本経済新聞
- 7~9月期GDPが年率21・4%増…前期急減の反動、実額では感染拡大前の水準に及ばず : 経済 : ニュース : 読売新聞オンライン
- ビジネス特集 経済データで見る新型コロナの半年 | 新型コロナ 経済影響 | NHKニュース
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