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「大人のための倫理、政治・経済」というテーマで色々書いてます。政経や倫理の講義、大学(中学)受験、書評、キャリア教育、社会科教育、時事問題、教師の日常などなどを発信してます。

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【大人のための哲学】分断社会を考えるヒントに~寛容の大切さを説き続けた哲学者ヴォルテール~

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現代社会では、多様性が重視されています。

口で言うのは非常に簡単ですが、それを貫き通すことは難しいです。
その証左として、ネット上での炎上やテロ事件、ヘイトスピーチの問題などは絶えることがありません。

自分の認められない価値に遭遇した時にも、それでも「多様性が大事だ!」と説き続けること、一貫し続けることは難しいです。


けれども、不寛容は時として社会に大きな害をもたらします。
そうした時代だからこそ、寛容の大切さを説いたヴォルテールの思想が大きな意味を持つんじゃないかと思います。

 

 

ヴォルテールって誰?

 

ヴォルテール(1694-1778)は18世紀に活躍したフランスの啓蒙思想家・文学者です。『寛容論』や『哲学書簡』などの著作を残しています。
イギリスの合理的な思想に感銘を受け、フランス社会の在り方を批判してバスチーユ牢獄に投獄されたり、冤罪事件に対して声を上げたりするなど、当時の非合理的な社会体制や不正義に対して異を唱えました。彼の影響を受けた人物にモンテスキューなどがいます。

ja.wikipedia.org


啓蒙思想とは?

 

啓蒙思想啓蒙主義)とは次のような考え方です。

 

18世紀ヨーロッパにおける、中世的な思想や慣習を打破して、

近代的・合理的な知識体系を打ち立てようとした一連の思想のこと

 

 

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啓蒙とは、「明るく照らす」という意味です。17~18世紀のヨーロッパ社会では、未だに中世的な慣習や社会体制が残存していました。人々は過去の因習にとらわれ、無知蒙昧なままでいる。だからこそ、理性や科学の力によって暗い社会を「明るく照ら」し、人々を無知から解放してあげようという運動が起こったのです。
そうした啓蒙思想を推進した代表的な人物の一人が、ヴォルテールでした。

 

 

ヴォルテールの哲学~寛容~

 

当時のヨーロッパ社会ではキリスト教が強い影響力を持っていました。

しかし、キリスト教の中でもカトリックプロテスタントの双方が排他的になっていました。血みどろの宗教戦争を経て、双方が歩み寄りを見せる一方で、地域によってはカトリックプロテスタントを弾圧する、といったことも起こっている時代でした。
同じキリスト教徒といえども、双方の関係はあまりよくなかったのです。
そうした中で、フランスでとある事件が起こりました。

 

カラス事件です。

以下、光文社学術文庫より出版されている『寛容論』から事件の引用です。

キリスト教カトリックプロテスタントの対立がつづくなか、実子殺しの容疑で父親が逮捕・処刑(死刑)された「カラス事件」。
狂信と差別意識の絡んだこの冤罪事件にたいし、ヴォルテールは被告の名誉回復のために奔走する。理性への信頼から寛容であることの意義、美徳を説いた歴史的名著。
この著作が発表される2年前の1761年10月に南仏トゥールーズで起きた事件と一連の動向がフランスを震撼させます。

改革派キリスト教プロテスタントであったジャン・カラスの家で、その長男マルク・アントワーヌの死体が発見されました。実際には、長男が自ら縊死したということですが、当時、カラスが町では少数派であったプロテスタント信者であったこともあり、事件を聞きつけた群衆が宗教的な狂信から「ジャン・カラスが息子のマル・アントワーヌを絞め殺したぞ」と叫んだのです。この流言に煽られた町の司法当局は、カラスを逮捕し、公正な審理もないままで、車責めの死刑に処したのです。カラスの家族や関係者は死刑を免れたものの、一家離散し、名誉も財産も剥奪没収されてしまいました。

最初は、父であるカラスの実子殺しを疑ってもいなかったヴォルテールは、数日後、錯綜するさまざまな情報にふれて、実は宗教の狂信による煽動が、冤罪事件をもたらしたことを確信します。
そこから、カラスとその関係者の名誉回復に向け、ヴォルテールは危険を承知で、精力的な言論活動を展開することになります。
その中で、彼が主張しているのは、「寛容(トレランス=原意は忍耐)」という美徳でした。自然な理性にもとづいて宗教の狂信と暴力を徹底的に批判し、多様性との共存を、忍耐をもって求めつづけることです。

 

ヴォルテールは、カラス事件に関する言論活動を通じて、人々に不寛容の不利益と、理性的精神で冷静に物事を見つめる大切さを訴えます。

 

そうした彼の姿勢が次の言葉に集約されています。

知性が虚弱なひとびとは、陰気な迷信に動かされ、そして考え方が自分たちと異なる人間を犯罪者にしたててしまう

 

ひとびとにもっと思いやりと優しさをもってほしい

 

現代における意義

キャンドル, 教会, 祈り, 炎, 光, 宗教, 雰囲気, 信仰, 記念, キリスト教, 瞑想, 瞑想的

 

現代社会は多様性の時代と言われています。
その一方で、自分と異なる意見に対する排他的な言動を見ない日はなかなかありません。SNSやインターネット上での炎上問題は「気に入らない意見」の徹底的な排除のように思えます。外国人に対するヘイトスピーチの問題、イスラム国などによるヨーロッパでのテロ事件、様々なレベルでの問題は不寛容に一つの原因があるように思えます。

 

そうした排外的な「感情」は極端な世論を掻き立て、人々を扇動してしまうこともあります。何が真実なのかを冷静に確認せずとも、狂信的に世論を信じ込み、排外主義に加担してしまう。

時代を超えてもヴォルテールが読み継がれているのは、人類に不寛容がつきものだからかもしれません。

 

人間の弱さに目を向けつつ、それでも理性の力を信じ続けたヴォルテール

最後に彼の言葉を引用して終わりたいと思います。

 

私はあなたの意見には反対だ。だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る。

I disapprove of what you say, but I will defend to the death your right to say it.

 

 

 

 

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