新卒教員の教科書

私立高校一年目。『新卒教員としてのオリジナルテキスト』をつくろうという試みでブログを書いてます。社会科のこととかビビッときた本の書評とか日常生活のこととか。

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貨幣、通貨、資金の違いについて

言葉を整理する意味:貨幣、通貨、資金の違いとはなんだろう

仮想通貨、金融緩和、インフレーション、巨額の企業買収…。お金に関するニュースが流れない日はない。ましてや日常生活においても、お金と無縁な日はないだろう。

だからこそ、原点に立ち戻りたいと思う。すなわち、我々の生活を取り巻くお金とは何なのか、一度整理してみたい。まず貨幣と通貨の違いについて整理し、名称の整理を通じてお金について考えていきたい。

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貨幣とはなにか

辞書を引くと、貨幣とは「商品の価値尺度や交換手段として社会に流通し、またそれ自体が富として価値貯蔵を図られるもの」デジタル大辞泉)、一方で、通貨とは「流通手段・支払い手段として機能している貨幣」(同上)とされる。つまり、貨幣と通貨はほぼ同義であるものの、特に流通した貨幣を通貨という。

英語で貨幣は"money"である。moneyはラテン語の"moneo"(忠告する)を語源とする。それはローマ神話最高神であるジュピターの妻であるユーノ(juno)に由来する。ユーノは結婚生活をつかさどる女神であり、結婚する男女に忠告する(moneo)ことを役割としていた。ユーノを祭る神殿にあったのが造幣局であり、そこで作られたコインがいつしか"moneo"と呼ばれるようになった。これがイギリスに伝わり、moneyと形を変えたのである。ちなみに"monster"も語源は同じ"moneo"である(人間が働いた悪事に対して神が忠告し戒めるという意味が"monster"である)。

通貨とはなにか

通貨は英語で"currency"である。これを分解すると、curは「走る」、-rentは「性質」、cyは「こと」を意味する。"currency"とは「走る性質をもつこと」、すなわち「世の中に流通しているもの」である「通貨」を意味する。curから派生した言葉として、"current"があるが、これも「今走っていること」から「現在」という意味になった。

資金とはなにか

最後に資金について、まとめたい。デジタル大辞泉には、資金は「事業の元手や経営のために使用される金銭」ないし「特定の目的のために用意され使われる金銭」とされている。さらに英語で資金は"fund"というが、元々はラテン語の"fundus"(土地、農場)に由来する。つまり、ある目的に使われる土地が転じて、ある目的に使われる通貨のことを資金というようになったのだろう。そもそも流通していなければ、特定の目的に利用することはできない。

練習問題:日本最古の通貨は?

よく歴史のクイズ問題として出題されるこの問題。一般的な正解は次のようになる。

708年に作られた和同開珎
683年ごろに作られた富本銭

この問題のポイントは、通貨を尋ねていることである。通貨の条件は流通していること、つまり人々に使われていたかどうかが重要なのである。

ここで本郷和人氏の本から引用したい。

富本銭はもちろん、和同開珎ですら、実際には機内などごく一部を除くと、ほとんど使われていないのです。しかも、当時の日本の銅の産出量の少なさからしても、到底、経済を回すほどの流通量ではありませんでした。貨幣が作られたことと、実際に貨幣経済が行われていたこととは、まったく別の話だったのです。

古代においてはまだ貨幣経済が普及していなかった、というのが、日本史のリアルです。むしろ、物々交換や、米や絹、布などのいわゆる物品経済のほうが主流だった。(『日本史のツボ』190-191頁)

つまり、流通していなかったために通貨とは言えないのだ。

では、日本最古の通貨は何だったのか。

和同開珎でも富本銭でもなく、清盛が輸入した銅の宋銭だったと答えるでしょう。銭というものは、大量に出回ってはじめて、通貨として機能するわけですから。(201ページ)

こたえは銅の宋銭である。

まとめ

最後に三つの言葉を整理したい。まず「貨幣」とは価値尺度や交換機能などの機能を有するものであり、それが流通すれば「通貨」となる。そして、何らかの目的に使われる通貨が「資金」といえよう。次回は、貨幣の機能についてまとめていく。