今、ある問題をめぐってネットで炎上している。
⬜️ 「炎上させようぜ」都立高「教師パンチ動画」殴打直前の会話
— フィフィ (@FIFI_Egypt) 2019年1月19日
東京都町田市内の都立町田総合高校で50代男性教師が1年生男子生徒を殴る様子を撮った動画がツイッターに投稿され、騒ぎにhttps://t.co/zjlw7OLnQy
教師が生徒たちにハメられて撮られた動画ってわけね、いつか起きると思っていました。
こちらのニュースも参考に
ツイッターで「町田総合高校」と検索すれば、問題の動画がすぐ出てくる。
そこにはたくさんのリプライが紐づいている。
リプライを見てわかるのは、教師の行動に肯定的な意見がほとんどだということだ。
詳しく見たい方はツイッターで検索を!
世論の分布
動画に対する反応を拙いながら分析してみた。8種類ある。
「教師の行動」「体罰に対する認識」「(言葉による)指導の結果生徒が変わるかどうか」について世論がどう考えているのか、という視点から分析してみた。
分布としては④が一番多いと感じた。
つまり、先生を舐めきって挑発しているし、口で言っても変わらないのだから、体罰もやむを得ないという意見である。
ただ多くの意見では「ただし体罰はだめだ」という補足もあるが、それは社会的な反応を意識したからゆえに付け足しただけかもしれない。
この後述べるように社会的に体罰はダメだという流れが2013年以降強く意識されるようになったからだ。
そもそも体罰とは何なのだろうか?
体罰の議論をする前に、似たような言葉としての懲戒と区別しておこう。
まず懲戒はこのように定義される。
懲戒とは、一般的には、組織体においてその秩序を維持するために、一定の義務違反者に対して制裁として課される不利益な処分をいう。P157
一方で体罰とは何だろうか?
体罰は学校教育法第11条で禁止されている。
第十一条 校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、監督庁の定めるところにより、学生、生徒及び児童に懲戒を加えることができる。但し、体罰を加えることはできない。
その内容については裁判でこう示されている。
「体罰」とは、事実行為としての懲戒のうち、被罰者に対して肉体的苦痛を加える制裁をいい、殴る・蹴る等その身体に直接有形力を行使する方法によるものと、正座・直立等特定の姿勢を長時間にわたって保持させる等それ以外の方法によるものとが含まれる(静岡地決昭 63年 2 月 4 日民事事件)。P162
文部科学省の見解でも、有形力の行使は体罰に含まれるとしている。
体罰の事例が文科省のHPで示されているので、参照したところ、今回のケースは体罰に該当すると思う。
また文科省の事例から判断すると、正当な行為とも言えないだろう。
もちろんホームページに書かれているのは、あくまでも「参考」事例であって、すべてを包括しているわけではない。
体罰が問題化した背景
2013年、今から6年前のことだ。
大阪府の桜宮高校の生徒が部活動顧問からの体罰を苦に自殺した事件があった。
この事件に世論が大きく衝撃を受け、以後体罰は絶対的に許されないという社会的な空気が醸成された。
その後も部活動での体罰が度々ニュースでクローズアップされていた。
しかし、今回の問題では体罰を肯定する反応が多い。
桜宮高校に対する世論との違いは何だろうか?
世論の分布
私個人は、その行動に理があるかないか、だと思う。
桜宮高校では理不尽な暴力がまかり通っていた。顧問の機嫌のために生徒への暴力が日常茶飯事だったという。
死を選択するほど追い詰められた少年の心境は想像を絶するものだろう。
理のない顧問の行動に世論は激高した。そして多くの人は少年の苦しみに思いをはせた。
しかし、町田総合高校のケースでは違う。
私は教師の行動には理があると思う。
生徒が教師を挑発し、それでも教師は耐えた。けれども、我慢の限界を超えた。
口で言ってもわからん奴には実力行使もやむを得ない。
そういう命題を共有している人が教師の行動に理解を示す反応をしていたのだろう。
みんな体罰がダメだということはきちんと理解しているのである。
けれども手を上げてしまった教師にも言い分があることはきちんとわかっているのだ。
関係ないけれども-個人的に
言葉で指導不可能な人間に対しては実力はやむを得ない、という人類史における命題がある。
そんな大きなレベルの話でなくとも、学校においては退学や停学などの懲戒処分で対応する。
しかし、体罰はダメなのだ。
今回これほど問題が大きくなってしまったのは体罰に頼らず、如何に組織的に生徒を指導するかが達成できなかったからだろう。
その点で様々な教訓を得た。
ただし、世論の同情もわかる。
早急に判断しては事態を見誤るだろうが、動画や該当学校の生徒のツイートを見た上で思うのだ。
私には先生が不憫で仕方がない。
教師としてこのような生徒に対峙した時、私に何ができるだろうか。
参考文献
この記事を書くにあたってこちらの論文を参考にした。
薬師丸正二郎「体罰と懲戒~その限界と判断基準~」
https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_110007571105.pdf?id=ART0009395389