超大国の不在。
中国の経済的・軍事的台頭によってアメリカの地位が相対的に低下し、国際秩序が変動期に入っている。
そうした変化の中で一定の地位を占める国がある
ロシア。
日本との平和条約締結に向けた日ロ交渉、中東でのシリアへの介入、ウクライナへの軍事介入、アメリカ大統領選挙への介入疑惑など…
ニュースには大きく出るのになんだかよくわからない。
謎の大国、ロシアについて調べてみた。
グローバル化の進む現代において各国の特徴を理解することはもちろん、日本の隣国に目を向けることは悪いことではないだろう。
プーチンの圧倒的な地盤
プーチン、実はかなりのエリート。
レニングラード大学の法学部を卒業後、ソ連のスパイ機関であるKGBに。
その後サンクトペテルブルク市の副市長などを経て、大統領になった人物である
プーチンは厚い支持基盤を持っている。
それは彼の大統領時代に経済が回復し、それを人々が「プーチンの業績」だと錯覚したから。
どういうことか。
ロシアの前身であるソ連は1991年に崩壊した。
崩壊直前のソ連経済はガッタガタ。社会主義から資本主義へと移行したことで経済が混乱していた。
そのため、ロシアの初代大統領エリツィン時代(1991~1999)は経済が混乱していた。
しかし、次のプーチン時代(2000~、一時首相、のち大統領に復帰)には経済が回復する。
ただし、ロシア自身の要因ではない。
中国などの新興国が台頭したことで石油や天然ガスなどのエネルギー資源の需要が高まったことが要因とされる。
ロシアは実はかなりの資源大国である。
資源ブームに乗って経済が回復した。そしてそれをプーチンの業績と民衆が錯覚した。
だから、プーチンは圧倒的な支持を得ている。
しかし、国内のインテリは「実は違うんだ」ということを知っているために度々でもが起こったりする。
ちなみにプーチンは地盤強化のために宗教勢力も動員している。ロシア正教会である。
ロシア経済の脆弱な構造
もちろんロシアは資源に依存した経済構造のため、その土台は不安定だ。
ロシアはパイプラインでヨーロッパへ天然ガスを供給している。
しかし、ウクライナ危機でそれを武器にするなどヨーロッパにとっては極めて不安定な供給減だった。
そんな中でシェールガス革命が起きた。
中東の石油の価値が低下する(中東の油田地帯の確保で介入を繰り返したアメリカはシェールガス革命で中東に興味を失った)。
湾岸産油国は焦る。
そんな中ウクライナ危機が起こる。
中東はヨーロッパへ「ロシアよりも」安価に石油を輸出すると持ちかける。
ここにヨーロッパと産油国の間で合意が成立し、新たな資源供給先を欧州は見つけたのである。
ロシアは切羽詰まる。
「資源で持っている経済が終わる」
そこで目を付けたのが、東の果ての日本だった。
樺太からパイプラインを作って日本へと直接天然ガスを供給するという計画を持ち出した。
これは日本にとってもメリットがある。というのは、天然ガスは一度液化してタンカーで運ばなければならない。さらに陸揚げしてからまた気化して都市ガスとして利用するため、いちいちコストがかかる。しかし、パイプラインならその手間も省ける。
ただロシアにはパイプラインを作る資金も技術力もない。そこで日本に協力を、という運びだ。
北方領土交渉が加速したりしなかったりするのはロシア側の要因も大きい。
ロシアが日本に接近した背景にはロシアの経済構造と国際経済における変化(シェール革命)があったのだ。
ロシアの行動原理
ロシアは侵略に恐怖を持つ国である。
ちなみにプーチンの兄がドイツの侵攻を間接的な理由としてなくなっている。
こうした恐怖がソ連(ロシア)の周囲に衛星国を置く戦略の根本にある。
たとえばソ連時代の東ヨーロッパなどである。
それをふまえてウクライナ危機を見れば、すんなり理解できる。
ウクライナはロシアと国境を接し、文化を共有する距離の近い国である。
冷戦時代はここでソ連の兵器が多く作られていた。
そのウクライナにEU加盟の世論ができた。
もし加盟すればロシアとEU加盟国が国境を接する。もしかしたらNATOにウクライナが加盟するかもしれない。そうしたらロシアは侵略の危機に陥るかもしれない。
侵略の恐怖がロシアを動かした。
ウクライナの西部はEU寄りだが東部はロシアよりである。この東部の住民に働きかけてロシアが分離独立運動を促したのである。
以後、ウクライナは東西で対立状態が続いている。
さらにロシアはクリミア半島を併合した。
それはロシアの気候に注目することで分かってくる。
ロシアは寒冷で冬の間は港が凍る。だから、長年不凍港を求めて戦争を重ねてきた。
南下政策である。
大英帝国が7つの海を支配した時代は海軍力がものをいう時代だった。
だから、ロシアとイギリスはユーラシア大陸をまたにかけて覇権争いを繰り広げる。
しかし、ロシアはイギリスに敗れ、結局不凍港を手にすることができなかった。
一転して冷戦時代である。
世界中に社会主義国家が出来ていった。
ここにシリア情勢にロシアが介入するヒントがあった。
シリアは社会主義政策を採用していた。
その関係からソ連と距離が近く、それはロシアになっても続いていた。
シリアにはロシア軍の基地がある。タルトゥースという地中海に面した軍港である。
もしアサド政権が倒れればロシアの軍港が失われる。積年の夢の結実、不凍港である。
だから、ロシアはアサド政権側に支援の手を差し伸べるのだ。
さて、そもそもロシアが不凍港を求めたのは冬に凍る港しかもっていなかったから。
けれども、その事態にも変化が起きている。
気候変動による変化
今まで分厚い氷に覆われていた北極海。
しかし近年の気温上昇により氷が解け、新たな輸送ルートや資源開発の対象として注目されているのだ。
北極海をめぐって熾烈な争いが起こるかもしれない。
日本も無縁ではないかもしれない。
まとめると
ロシアの行動原理は次のようにまとめられる。