財政法第4条には次のように書かれている。
国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
このように、財政法第4条では、公共事業などの資金調達を目的とする建設国債を除いて、赤字国債の発行を原則として禁止している。だからこそ、毎年特例法(特例公債法)を制定して政府は赤字国債を発行している。1975年以降、バブルの一時期を除いて毎年赤字国債が発行された結果、現在の政府の国債残高は585兆円を数える。財政規模の拡大に税収が追い付かず、国債発行が積み重なった結果ここまで借金が膨れ上がったのだ。
財政活動は税金が主な原資となる。税収入が不足していれば公債を発行して補わなければならない。もし債券が発行できなければ、自由に財政活動はできないだろう。現状のような財政規模の拡大は、公債発行が無制限だからこそ可能なのではないだろうか。今回はその問題について考えたい。
そもそも赤字国債は発行することはできない
財政法第4条の通り、赤字国債の発行は本来禁止されている。そもそも国債は将来世代の借金であり、借金は返済することを前提としている。この返済という点において国債発行のハードルは非常に低い。
元々国債は現金償還の必要性があった。つまり、満期が来た場合の返済は現金でなければならなかったのである。しかし、1984年の特例公債法から現金償還が努力義務になった。ここで、現金償還から借換償還となったのである。国債の償還資金を調達するために新たな国債を発行するようになった。つまり、借金を返済するために新たに借金をすることが可能になったのである。政府は国債の償還を実質的に考慮する必要がなくなったのである。ここにおいて、現金償還という借金に対する歯止め装置がなくなり、国債発行が無制限に行えるようになった。
国債が無制限に発行できるからくり
では、そうした自転車操業がなぜ可能なのか。それは現状において国債が価値を持ち、市場で安定して売買されるからである。国債は債務証書、つまり借金の証明書である。本来無価値である借金の証明書が価値を持つものとして機能するのは、人々がそれを「信認」しているからである。つまり、発行主体である支払い能力に対する信認である。そして、信認の証として国債を購入するのである。購入者がいるからこそ、政府は資金を調達できる。
しかし、国債が現金償還を前提としなくなったため、支払い能力を測ることはできなくなった。つまり、実際の能力を計測できない以上「支払い能力がある」という「仮定」で人々は国債を購入しているのである。万が一、政府に支払い能力がないことが「明るみになれば」国債を発行しても購入者はいなくなる。ギリシャ危機はその典型例であろう。
ポイントは次の通り
①まず財政規模が拡大した背景には、国債が無制限に発行できるという土壌があったことがあげられる。
②無制限発行の理由の一つとして、現金償還から借換償還に変更されたことがあげられる。発行を制限する法的な歯止めがなくなったのだ。水は低きに流れる。資金を手にいてる楽な手段が手に入れば、それを活用しないわけがない。
③日本国債の場合、安定資産として多くの購入者(日銀買い取りを期待する民間銀行など)がいるため、ある程度無制限に発行できる。それは発行主体である政府の支払い能力に対する信認が背景にある。ただし、その信認が消えれば、国債をいくら発行しても買い取り手がいなくなるため、実質的に無制限に発行できなくなる。