Shiras Civics

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「人生をどう生きるか」がテーマのブログです。自分を実験台にして、哲学や心理学とかを使って人生戦略をひたすら考えている教師が書いています。ちなみに政経と倫理を教えてます。

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公民の先生だからできること~わかりやすさと自分ごと化~

 

先の参議院選挙が終わった後、ニュースを見ていて結構多いなあと感じた意見があります。

 

そもそも政治ってよくわからないし、投票がどういう意味があるのかわからないという声です。

 

これを文字通り受け取ってはいけないと思います。

つまり、政治制度だとか、投票の機能とか、複雑な社会制度全般を理解できないという、学校教育で習う公民科の知識の全体的な欠如がうかがえるのです。

 

 

社会制度の複雑さ

 

人間は物事を単純化して理解します。

たとえば、知識を分類したり、二項対立的にとらえたり、ストーリーとして捉えたりと、様々な理解の仕方がありますが、その過程で必ず抜け落ちてしまう知識や見方があります。それは仕方のないものですし、加筆・修正して知識をアップデートしていけば、より多角的な視点から物事を捉えられるようになるので時間や努力量の問題だともいえます。

最初は極度に単純化して、そして徐々に複雑なものとして捉えることができるようになる。

 

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けれども、それは理解しようという意思を持ち、理解できる能力をもち、理解できる環境にアクセスできる者に限られます。

あらゆる人がこのような状況にあるとは必ずしも言えません。相関関係でしかありませんが、参議院選挙の投票率が50%を下回り、18・19歳の投票率が31%であったことを踏まえると、投票しなかった方の中には、わからなさゆえに棄権した方もいたのかと思えます。消費税の意味だとか、憲法改正の意味だとか、よくわからないのも当然かと思いますが。

 

ですが、もしわからなさのために棄権したのであれば、そしてわかりたいけど複雑で理解ができない苦悩を抱えているのならば、私は助けてあげたいなあと思う。というのも学校教育にも責任の一端があるのだと思うからです。

 

複雑にすることで誰が得をするのか

 

公民科をして政治・経済・倫理と幅広く教材研究をしていますが、専門としてやっていても膨大な範囲を扱っているなあと感じます。

たとえば税制度。直接税・間接税の違いはもちろん、社会人になると控除だとかふるさと納税だとか税金について本格的に勉強するようになります。で、勉強すると結構税金は取られ損になっていることが多いことがわかるわけです。サラリーマンの捕捉率はほぼ100%といいますが、それでも確定申告をすれば戻ってくる場合も多い。大学生だって派遣のアルバイトをしていれば、ほぼ確実に多く取られている。つまり、多くの人々は税金の取られ損の可能性がある。国家は本来的に徴収すべき税金よりも多くの税金を取っているわけです。けれども、社会制度は基本的に行動しないものには恩恵を与えない。裁判しかり、請求しかり、投資しかり、そして投票もです。

 

巨大な社会制度という枠組みの中で投票という手段の社会的機能がしっかりと理解されていない。だから、自分は何のために投票行動をしているのかがそもそもわからない、というわけです。知らないから動きようがないのです。

 

だからこそ、しっかりと社会制度を学ぶ機会と、それをどう活用していくかを訓練する機会を保障することが主権者の育成にとって極めて大事だと思います。

ちなみに、ここでいう主権者は社会制度の意味を理解し、その上で自分の意見をもって投票できる人というふうに意味を狭めています。

主権者が増えることは、自分たちの社会づくりに参加する人が増えることを意味します。それは幅広い人々の利益が社会づくりの際に考慮されることを意味します。ですから、参加者が増えて意見が反映されれば、それは最大公約数的により多くの人が暮らしやすい社会の実現につながるのです。

 

しかし、現状は参加する者も少なく、かつ参加を妨げる一つの要因として複雑な社会制度の理解の困難さがあげられるのです。これをどうにかして改善したい。知らず知らずのうちに自分たちの幸せな生活が侵食されてしまうから。なぜなら内に秘められた意見は、意見として世間は認識してくれないから。投票だとか形として出さなきゃ考慮なんかはされないんです。

 

わかりやすく、考えてもらって

 

わかりにくさの解消は非常に大事です。それは主権者を育てる公的な教育インフラだから。

その点で次の動画はとてもいいなあと思いました。

 


【政治】憲法改正問題を中田がわかりやすく解説!〜基礎知識編〜①


【政治】憲法改正問題(第9条)の本質に中田が切り込む!〜核心編〜②

 

今の時代、探せばいろんなコンテンツが出てきます。

こういうコンテンツが普及して、生徒が公民科に興味を持ってもらえたらなあと思いますし、同時に自分のコンテンツの魅力も高めていく必要があるなあと思います。

 

教員ですから影響を与えられる範囲はとても狭いです。

けれども、まずは目の前の生徒たちが社会制度を理解して、それをうまく自分のために活用できるよう、わかりやすく丁寧に、そして面白く教えたい。そうして、それらを活用する機会を提供できるような授業を展開していきたいなあと思います。

それが公民の先生にこそできることだと思うから。

 

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