Shiras Civics

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「人生をどう生きるか」がテーマのブログです。自分を実験台にして、哲学や心理学とかを使って人生戦略をひたすら考えている教師が書いています。ちなみに政経と倫理を教えてます。

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【主権者教育のヒントに】対話とデモが大事なわけ-民主主義は私たちがつくるもの

 

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久々に面白い記事を見つけました。

リンク先の記事は民主化について論じていますが、この記事では民主主義の限界とそれをどう乗り越えるかについて論じます。

 

 

手続き的民主主義とその限界

民主主義には多様な定義がありますが、その中でもロバート・ダール博士の手続き的民主主義が有名かと思います。

 

ダール博士はまず、民主主義を「 政治体制の原理」として限定し、それを、市民の政治参加の程度(政治的平等)と、公に異議を唱えられる程度(政治的自由)という二つの要素から測定可能なものとして定式化しました。そして、この二つの要素を構成する、市民的・政治的諸権利(表現の自由、結社の自由、報道の自由、選挙権、被選挙権など)が、実際に行使される一つの機会として「自由・公正な選挙 」が注目され、また、その実施のされかたによって民主主義か否かが判断できると考えられるようになりました。

すなわち、このような民主主義の定義(これを「手続き的民主主義」と呼びます)に則るとすれば、「民主化」とは自由・公正な選挙の実施を目標とし、それを担保するような市民的・政治的諸権利が獲得・整備されるプロセスだと理解できるのです。民主化 民主主義を「作る」試みと、それを超えるもの - ジェトロ・アジア経済研究所

 

▼こちらの記事でロバート・ダールについて言及しています。

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民主主義を手続き的なもの、つまり制度的な条件の整備に着目して捉えれば、政治過程は静的なものとなります。

もちろんダール博士の指標化により国際比較が可能になり、研究が進展していったという成果はあるのですが、制度はあくまでも民主主義の形式的要件です。当然、彼は分厚い中間層などの社会的条件にも着目していましたが、それらもあくまで存在しているかどうか、という静的な条件です。

 

しかし、民主主義というのは、手続きに則って制度を活用したり、あるいは制度の不備を指摘するといった動的な側面を含みます。たとえば、デモや陳情などです。

丸山眞男という政治学者がいましたが、彼は民主主義を「不断の永久革命」と呼びました。つまり、民主主義を実現するには、制度の整備だけでなく、人々が不断に行動し続けなければならない、ということを意味します。

 

 丸山眞男

 丸山眞男 1914-1996。20世紀の日本が生んだ世界的な学者・思想家。父・幹治は戦前の代表的政論記者。その友人・長谷川如是閑の薫陶をうけて育った。日本学士院会員、ハーバード大学プリンストン大学名誉博士東京大学名誉教授。主著『日本政治思想史研究』『現代政治の思想と行動』は数ヶ国語に翻訳され、世界中に広い読者をもつ。『日本の思想』は岩波新書中でも超ロングセラーの一つである。南原繁の勧めで日本政治思想史を専攻し、徳川時代における近代的思惟の形成を実証して、この学問分野の確立に資した。また治安維持法による検挙・勾留や一兵卒としての兵営生活の経験などをふまえ、近代日本の天皇制的精神構造を内側から分析し、「抑圧移譲の原理」や「無責任の体系」の仕組みを解明した。さらに福澤諭吉研究を通して明治維新がもつ今日的意義を明らかにし、自発的結社を核とした「市民社会」の形成や「精神的貴族主義」の必要を強調した。永久革命としての民主主義の主張、また戦後の大衆社会状況下での人々の原子化と大衆民主主義の陥穽(画一化)の指摘はこれと裏腹の関係にある。米ソ冷戦の最中に、政治的リアリズムの観点から日本国憲法第九条のもつ世界史的意義を高唱し、国際秩序の再編を構想した。丸山眞男文庫 バーチャル書庫

 

 民主主義を実質的なものにするには対話や直接行動も重要

 

「選挙」に還元または矮小化されがちな「民主主義」や「民主化」は、そこで展開される政治の、重要であるが「あるひとつの側面」を捉えるものでしかないということなのです。民主化 民主主義を「作る」試みと、それを超えるもの - ジェトロ・アジア経済研究所

 

近年、投票率の低下が先進民主主義諸国で共通の問題となっています。

この原因はさまざまにありますが、一つは行政権の肥大化があげられます。つまり、社会が複雑化するにつれて行政の役割が大きくなっていき、選挙で選ばれる政治家よりも官僚の影響力が強くなってしまい、国民が政治をコントロールするのが難しくなってきたという現象です。

これを象徴するのが内閣提出法案の成立率の高さです。政治家ではなく官僚が法律を作って、国会でこれが多数成立してしまうのです。これ自体は国会の第一党が与党となり、政権を組織する議院内閣制を日本が採用している以上は当然起こってしまうことです。しかし、これはますます官僚の影響力を増大させてしまいます。

 

だからこそ、人々が選挙以外の回路で政治家に働きかけ、立法措置を取るよう促すことが大事なのです。つまり、「選挙制度立憲主義的な憲法があるから民主主義が成立しているんだ!」ということではなくて、選挙制度を活用する、デモや陳情など選挙制度以外の政治参加方法も検討する、SNSなどを使って発信する、政治家が立憲主義的に憲法を運用しているか監視する、といった感じで、立法府が正常に民意を反映するよう行動することが大切なのです。代議制民主主義では、政治家と国民の間でどうしても意識の差が生じてしまうので、そこを埋める営み、努力が不断に行わないといけないのです。

 

ここにおいて、民主主義の定義は単純な手続きではなく、人々が自らを統治すること、ということになろうかと思います。この定義はカール・シュミットが述べている、「民主主義とは支配する者と支配されるものが同一であるということ」という定義と非常に近いかと思います。

 

多様な政治回路を活用する市民、これを主権者教育で念頭に置いていきたいところです。

 

 

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