8月1日、中東で初の原子力発電所が稼働しました。
UAEで原子力発電所が稼働
まずアラブ首長国連邦(UAE)がどんな国なのか、さっと見ていきましょう。
オレンジ色の国がUAEです。人口1千万に満たない小規模国家ですが、石油や天然ガスの埋蔵量は世界屈指の産油国です。
首長が治める五つの首長国から成り、連邦全体としては大統領制を採用しています。首長国の中でもアブダビが突出しており、実質的にはアブダビ首長が大統領を世襲している独裁国家です。
外交的にはサウジアラビアや欧米諸国寄りの立場をとっています。
ちなみにかのドバイもUAEにあります。
それは拡大する電力需要をまかなうために安定的な電力供給体制を構築する必要があったからです。
天然ガスなどのエネルギー資源に依存し続けるのではなく、原子力発電に可能性を見いだし、原発発電にこぎつけました。
原子力発電所が中東に置かれることのリスク
まず地理的なリスクです。
現在の中東情勢は非常に不安定です。大まかな枠組みで言えば、シーア派の大国イランを中心とする陣営と、スンナ派の大国サウジアラビアを中心とする陣営に分かれています。
イランとサウジは中東における覇権を目指してシリアやイエメンで代理戦争を行っており、またイランが核開発を行っている疑いがあるため、中東情勢が極めて緊迫しているといえます。
また、イラク戦争やアラブの春以降、中東の多くの独裁国家が崩壊し、テロリズムの温床となっています。イスラム国やイラクにおける米軍に対する自爆テロなど個人が国家に対して攻撃を仕掛けることが珍しくなくなりました。
UAEはサウジアラビア側の陣営に属していますが、上記のようなイランとの緊迫関係やテロリズムの脅威などがリスクとしてあげられます。地理的なリスクが非常に大きいのです。
昨年度、サウジアラビアの産油施設がドローンで攻撃されましたが、こうした事態がUAEの原発施設で起こらないとは言い切れません。
次に核兵器拡散のリスクです。
核兵器を巡る現在の国際秩序の原則は「持っている国は持ち続け、持たない国は永遠に持たない」という原則です。
この根拠は1968年に調印された核拡散防止条約に求められます。この条約では、既に核兵器を保有している五大国(アメリカ、イギリス、ソ連(ロシア)、フランス、中国)にのみ核の保有を認め、それ以外の国は核兵器の保有を認めないということが決められました。
ただし、原子力の平和利用は認められており、 原子力発電所の建設は認められていますが、IAEA(国際原子力機関)の査察を受け、核開発をしていないかどうか、常に国際的な監視を受けることになります。
現状、中東地域の中でもUAEやサウジが原子力発電に期待を寄せていますが、核開発能力を持ちたいという思いもあるようです。というのは、敵対するイランが核開発能力を持っているためです。
アメリカはこうした状況に対して注視していますが、リスクとして核拡散が起こりうる可能性もあります。仮に核拡散が生じれば、中東情勢はさらなる緊迫状態へと陥るかもしれません。
日本への影響は?
中東で原発事故が生じれば、原油の供給体制に何らかの影響が生じるかもしれません。
ともすれば、原油価格の高騰、あるいはクリーンエネルギーの開発へと官民挙げて取り組まざるを得なくなったり、家計への影響や産業構造の変化などの影響をもたらす可能性があります。
引用:中東依存率は88.2%…日本の原油輸入元をさぐる(石油統計版)(2019年公開版)(不破雷蔵) - 個人 - Yahoo!ニュース
まとめ-不安定な情勢の中でリスクが大きい
それでは今回の記事のまとめです!
日々流れるニュースを理解する参考になれば幸いです。
それでは!
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