トランプ大統領がごねています。
大統領選挙に敗北した場合、その結果について認めずに争う姿勢を示しました。
背景にはコロナウイルス感染症による郵政投票の増加があげられていますが、いったいどういうことなのか、詳しく見ていきましょう。
トランプ氏、大統領選敗北時は結果争う姿勢 「郵便投票増加で不正横行」 - 毎日新聞
トランプ大統領の主張
郵便投票とは、その名の通り、郵送による投票です。
アメリカでは長年、郵便投票が投票手段として認められてきました。
コロナウイルス感染症が拡大しているため、11月3日に行われる大統領選挙では郵便投票が今までよりも増えるとされています。
しかし、トランプ大統領はこの郵便投票が不正選挙の温床になると指摘。
加えて、民主党が支持基盤の州では共和党に不利になると主張しています。
そのため、郵便投票で投票した有権者は、投票所に行って再投票をすべきだと唱えています。もはや郵便投票の意味なし。
しかし、専門家からは不正選挙はおこらないと反論が上がっています。
選挙制度の専門家や州政府の選挙担当者たちは、郵便投票が拡大しても、広範に不正投票が行われる可能性はないと指摘してきた。しかし、トランプ氏は十分な根拠を示さないまま、野党・民主党が知事を務める州で、組織的な不正が起きると繰り返し訴えてきた。
一体、何が正しいのか、何が問題なのか、次の章で具体的に見ていきましょう。
郵便投票は行けないのか?~選挙が公正であることの意味~
トランプ大統領が懸念している不正選挙とは、集計ミスや票の書き換えなどが考えられます。
今回はバイデン候補との接戦が予想されていますが、過去アメリカの大統領選挙で接戦となった選挙では、選挙の不正が疑われてきました。
戦後、政権交代に懸念が広まったのは2回ほどある。
最初は1960年大統領選、民主党ジョン・F・ケネディ候補と共和党リチャード・ニクソン候補(後の大統領)の対決だ。ケネディ氏が僅差で勝利したイリノイ州とテキサス州において、ケネディ支持者による不正の疑いが選挙直後に浮上。イリノイ州では死んだはずの人が投票していた事実も後に発覚した。ニクソン支持者が不正を訴えていたにもかかわらず、ニクソン氏は選挙翌日午後、敗北を宣言した。
ニクソン氏はメディアに対し、「わが国は憲法危機の苦悩を経験するわけにはいかない」と語っている。仮にイリノイ州とテキサス州でニクソン氏が勝利していればニクソン氏が選挙人2人の差で大統領に8年早く就任していたこととなる。
また、記憶に新しいのは2000年大統領選における共和党ジョージ・W・ブッシュ候補と民主党アル・ゴア候補の対決であろう。激戦州フロリダでブッシュ氏がゴア氏を僅差(537票)で破ったが、パンチカード式投票用紙でゴア氏への投票が誤って他の候補に記録されていた疑惑が浮上し、ゴア氏は再集計を要請した。だが、共和党保守派が多数派を占めていた連邦最高裁がフロリダ州最高裁の判決を覆し、同州での手作業による票再集計を停止することとなった。連邦最高裁の判決を受け、ゴア候補は敗北を宣言。同州でゴア氏が勝利していれば、ゴア政権が発足していた。
アメリカの選挙は国政選挙といえども、州が管理しています。
アメリカは州ごとに共和党・民主党の支持基盤が異なり、また郵便投票により投票所で民主党支持者が不正を働くのではないか、という疑念からトランプ大統領が批判をしているわけです。
日本だと中立的な選挙管理委員会が管理をしますから中々想像しづらいですが、アメリカでは州ごとに党派が異なるために上記の問題が生じます。日本だと〇〇県なら〇〇党、△△県なら△△党を指示する人が多数派で選挙管理もそれに左右される可能性が高くなってしまうという話ですね(実際はそんなことはないですが…)。
そもそも公正な選挙とは何でしょうか?
選挙には以下の原則があります。
- 普通選挙…一定年齢以上の人には投票資格が与えられる原則
- 平等選挙…一人一票の原
- 直接選挙…直接候補者に投票できる原則
- 秘密選挙…誰に投票したかを知られない原則
仮に郵便投票で不正が行われれば、これらの原則が揺らいでしまいます。たとえば、票が書き換えられれば望んだ候補者に直接投票する機会が失われますし、郵便投票が無効になれば、平等選挙の原則が損なわれてしまいます。
民主主義にとって公正な選挙は土台にある、インフラのようなものです。
投票機会が等しく与えられ、票が公正に数えられることは民意を反映する極めて重要な手続きです。
過去の選挙でも不正疑惑はあったものの、現状アメリカの選挙制度は公正な手続きが採用され、公正な選挙が保障されているといえます。
選挙管理が国家による所管ではなく、未だに行政レベルの事務なのは、そうした信頼の表れともいえるでしょう。
今後の見通し
Q.選挙結果が出たら、平和的に権力を移行するとここで約束しますか?
「何が起きるか見ないといけない。私は郵便投票について非常に強い不満を述べてきた。郵便投票はめちゃくちゃだ」(トランプ大統領)
トランプ大統領は大統領選挙で民主党のバイデン候補に敗北した場合に場合に、平和的な政権交代に協力すると確約しませんでした。
仮にトランプ大統領が敗北した場合、司法判断に訴える可能性もあります。
もしそうなれば、連邦最高裁判事のカラーが判決に大きな影響を与えます。
先日、ギンズバーグ氏が亡くなられたため、後任の判事をどうするかが焦点になっていますが、仮にトランプ大統領が指名した候補が後任になれば、9人中3人がリベラル(民主党派)、6人が保守(共和党派)となり、トランプ大統領に有利な判決を下す可能性が高まります。
トランプ大統領の発言を巡って、共和党内部からも異論が出ています。
今後はトランプ大統領は自らの発言を巡って議会との調整が行われていくと思いますが、仮に大統領個人が郵便投票を始め選挙に不信感を抱いていると仮定した場合、①連邦最高裁判事指名を急ぎ、②敗北すれば、共和党派が多数派となった最高裁判事の下で司法判断に訴える可能性が高いでしょう。
そもそもトランプ大統領が敗北した際に、トランプ支持者が結果を納得して受け入れるでしょうか。トランプは再三郵便投票は不正だと訴えていますから、支持者は選挙結果に抗議するかもしれません。
つまり、11月3日に行われる大統領選挙以降も、大統領が誰かをめぐる騒動が続いていく可能性があるわけです。為政者が決まらなければ、外交や内政などに影響が生じ、社会不安が生じる可能性もあります。バイデン支持者とトランプ支持者で対立が顕在化するかもしれません。
以上、皆さんのお役に立てれば幸いです!
それでは!
▼最近出版されたアメリカの入門書。オススメです。
▼アメリカの大統領選挙についての過去記事です。
参考
トランプ氏、大統領選敗北時は結果争う姿勢 「郵便投票増加で不正横行」 - 毎日新聞
【新型コロナ】米国の感染者、700万人突破-冬に向け悪化懸念も - Bloomberg
トランプ氏、郵便投票を再批判 「正しく結果確定しない恐れ」 | ロイター
トランプ氏、郵便投票が集計されたか確認するため投票所で再投票を - Bloomberg
アメリカで大統領選後に大混乱が起きるワケ | アメリカ | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
早わかり「米国の選挙」- 米国の選挙手続き|About THE USA|アメリカンセンターJAPAN
トランプ氏 平和的な政権交代確約せず、与党執行部 否定的意見|TBS NEWS
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