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【大人のための政治経済】また中東の勢力図が変わるのか?~イスラエルとレバノンが国境画定の協議へ

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イスラエルレバノン海上の国境画定へ向けて協議する方向で調整しています。

10月1日、アメリカのポンペオ国務長官が発表しました。

今年に入ってイスラエルバーレーンUAEと国交正常化をしたばかり。

レバノンイスラエルの協議は、中東の勢力図を変えるかもしれません。

今回は、なぜ国境画定を協議するのか、そのねらいと背景について解説していきます。

 

www.jiji.com

 

イスラエルレバノンが国境画定に向け協議へ

 

10月1日、イスラエルレバノンが海洋・陸上の国境画定へ向けた協議をするという発表がありました。 

イスラエルとレバノンが海上国境画定に向け協議へ…ポンペオ氏「歴史的合意は米が仲介」 : 国際 : ニュース : 読売新聞オンライン

 

レバノンイスラエルとの間には現在、国交がありません。

お互いを国として認めていないため、当然国境の確定は長らく出来ない状態でした。

 

では、なぜ今国境の画定へ動き出したのか?

その大きな背景には海底資源の問題があります。

  

レバノンイスラエル・シリア沖の天然ガス油田

 

図1:東地中海地域における主要ガス田と既存パイプライン

イスラエル・キプロス・エジプトを中心とする東地中海の天然ガス事情 ―Leviathanガス田生産開始―|JOGMEC石油・天然ガス資源情報ウェブサイト

 

実は地中海には天然ガス油田が大量に存在しています。

この天然ガスの開発をめぐって、イスラエルレバノンは対立関係にありました。

レバノンは自国の排他的経済水域内に天然ガスの油田があると主張しているのですが、そもそも両国の海上の境界線が確定していないため、開発・生産を本格化できない事情があります。

 

さらには、イスラエルレバノン間では陸上の国境も画定していません。

現状、国境とされる場所にはコンクリート壁が作られ、これがレバノン側に建てられているため、レバノン政府は主権侵害だとしてイスラエルに敵対姿勢を示しています。

 

こういった緊張状態の中で仮にどちらかが天然ガスの開発・生産を強行すれば、一気に緊張状態が高まります。

 

え?あの軍事大国のイスラエルレバノンにビビるの?

 

というところですが、レバノンには国際テロ組織で武闘派のヒズボラがいるので、十分脅威なのです。

 

では、なぜこのタイミングで境界線の確定へ協議が行われるようになったのか?

それはレバノンの厳しい経済事情が背景にありました。

 

レバノン経済の状況

 

こちらの記事でレバノン経済について詳しく解説しています。 

www.yutorix.com

 

ざっくりまとめると、今のレバノン経済はこんな感じです。 

 

シリア内戦で経済成長が鈍化し、政府が財政危機に
電力などのインフラが止まり、銀行サービスが止まり、市民が大規模な反政府デモ
反政府デモにより、主要産業である観光業がストップ
そこにコロナウイルス感染症が拡大、政府はにっちもさっちもいかずデフォルト(債務不履行)を宣言
そして、8月にベイルート大爆発が起き、全土で反政府デモ
内閣が組閣されず、政府が不在の状態が続く
国際的な支援がようやく行われるか?←今ここ

 

レバノン経済は破綻寸前です。

ですから、その打開策として天然ガスの開発にかけているのです。

 

そうすれば現在の危機の大本になっている国債の返済のめどが立ち、正常も安定していくと思われます。

 

一方でイスラエルにとっては、軍事上の理由が非常に大きいかと思われます。

イスラエル軍は陸軍・空軍は非常に強力なのですが、海軍はそれほど強くなく、現状はヒズボラの攻撃から掘削施設を守れるかどうかは極めて不透明です。

ドイツに潜水艦を注文していますが、それも就航には2022,2023年くらいになる見込みです。

ですから、予め境界線を確定して開発・生産に乗り込む方が現状はベストなのです。

 

つまり、レバノンは経済状況がめちゃくちゃヤバい状況だから早く資源が欲しい。

一方で、イスラエルは軍事上の不安から今回の境界線の確定協議を始めたというわけで、緊急度はレバノンの方が高く、早期決着をすることが非常に重要でしょう。

 

レバノン側は本当にひっ迫していると思われるので、境界線画定はほぼ確実に行われるかと思います。

イスラエル側としても軍事上の安全性を確保して資源開発に取り組みたいでしょうから、今回の協議は成功するんじゃないかなと個人的に考えています。

バーレーンUAE同様、国交を持つことになればまた中東の勢力図も変わってくるでしょう。

 

ただ、両国には経済的な利害だけでなく、民族的・宗教的に双方に敵対感情を持つ人々もいますから、静観できないのは事実でしょう。

今後も注視していきたいと思います。

 

 

それでは!

 

参考