新卒教員の教科書

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新卒のあの頃の自分へ向けたメッセージをつらつらと書いております。『新卒教員としてのオリジナルテキスト』をつくろうという試みによるブログ。社会科のこととかビビッときた本の書評とか日常生活のこととか。

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やさしい社会を目指そう

 

 

記憶に残っている言葉なので書き留めておこうと思う。

 

「けどな…舷一郎」

 「ワシらに余裕があったさかい、分けてやれたんじゃ…

人間、余裕がないと他人に優しゅうでけへんもんや。

もし…この世にあの水と食べ物しかなかったら…

ワシは命がけで守ったろう…

人間ちゅうもんは恐ろしく汚いもんやねん。

そやからな、人間、一番大切なものは、その余裕やねん。わかるか?」

 

これは、かわぐちかいじ太陽の黙示録』に出てくる1シーンである。

坂巻という男性が主人公の舷一朗に投げかける言葉だ。

富士山の噴火と関東圏への大地震が発生した直後、ライフラインが機能していない中で食糧を奪われそうになった坂巻は暴漢たちと乱闘になる。しかし、舷一朗はむしろ食糧を分け与えるよう坂巻に促す。助け合いに気づかされた坂巻は発した言葉である。

 

2つの人間観

古来、人間に対する見方は大きく分けて2つあった。

性善説性悪説である。

前者は人間の理性・道徳に期待する一方で、後者は人間は本能で動くものだという立場をとる。

 

人間も動物である。しかし、他の動物と異なるのは高度な社会を構築する点にある。

生存本能に基づいて判断や行動をする。当然、生存本能に基づいた生理的欲求に則った行動をすることもあるが、自己実現などの社会的欲求もプログラミングされている。

 

しかし、大前提は生物としての欲求の充足である。

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マズローの欲求5段階説をこの上なく丁寧に解説する。あなたの欲求はどのレベル? | 自分コンパス

 

サバイブするのは「人間」社会だろうか

「競争」という価値観は昔からある。

しかし、「競争」が各人にとって普遍的であるためには、その条件整備が絶対的に必要である。

所得格差や生まれ持ったハンディキャップなどが全く考慮されない形式的平等では、健全な競争はなされない。

 

現在の社会は格差が拡大しつつある。

格差がどの程度あるのかを表すジニ係数は年々拡大している(再分配前の数値)。

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日本の格差は広がっている? 他の国と比べると?|イーズ 未来共創フォーラム

 

また、所得の中央値は10年前に比べ100万円以上下がっている。

世帯所得の中央値や世帯人員数の移り変わりをグラフ化してみる(最新) - ガベージニュース

 

確かに社会保障給付は毎年増加しているが、これがすべての世帯に分配されていることは意味しない。分配の恩恵に授かれない家庭もある。特に単身世帯の若者に対しては直接的な支援はほとんどない、というか負担に比して受益が少ない。

 

給料が全体的に下がり、かつ支援もないとすれば、自助は困難である。自らを助けようにも、基礎的な欲求の充足すら困難な場合もある。

こうした社会的な要因によって人々の基礎的な生活条件が整備されていないとしても、もし人々の中に「自己責任論」が内在化されていれば、自助できていないのは怠惰や無能ゆえになる。犯人は本人の努力不足「ということになる」。

 

だが、不満は募るものである。当たり前だ、余裕がないのだから。

余裕がなければ、人には優しくできない。ましてや自己責任論を強く持っていれば、それは他者を攻撃する拠り所ともなる。

 

やさしい社会を

 

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けれども、そういう社会ってつらくないだろうか。

いつだってギリギリな生活不安がすぐそこにある。

自分の不遇や能力を呪う、けれどもそれは社会的な要因が大きいものだとしたら…

「がんばればなんとかなる」という神話にすがって、「頑張ってもどうにもならない」現実にもがくことになる。

頑張ってもどうにもならなければ、犯人探しがはじまる。社会のルールを決めている権力者、特権階級への攻撃が起こる。そうして人類は革命を経験してきた。

近年の集団無差別事件だって、社会を呪ってきた出自があるかもしれない(事件の加害者を擁護するつもりは毛頭ないことを申し上げておきます)。

 

戦前の2・26事件などの背景を知ると強く強く思うのだが、そろそろ新自由主義的な政策はブレーキをかけて、分配政策にも目を向けたらいいのではないだろうか。

戦前の恐慌はすさまじいレベルであるが、今の日本は全く違う。だが、仮にも世界第3位のGDPがあり、サミットを構成する先進国日本である。おにぎりが食えなくて餓死したり、自殺者が3万人もいるのは悲しいではないか。

 

誰かにものすごく余裕がある社会よりも、ある程度みんなが余裕を持たないと、やさしい社会は訪れないのではないか。

冒頭の坂巻の発言は非常に示唆に富んでいる。

成長戦略も大切ではあるが、そろそろ分配政策について話すときが来たんじゃないだろうか。

同じ位置から競争できるように、スタートラインをしっかりと整備してほしい。それが政治に求める役目だ。

 

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